ネット通販が当たり前のように普及し、誰もが気軽に利用するようになって久しい。だが「コストが高い」「ウェブ知識を持つ社員がいない」といった理由から、オンライン販売に二の足を踏んでいる小売業者はまだまだ多いのではないだろうか。ましてや、個人が手持ちの品を売買するのに、わざわざストアを立ち上げるというのは大げさすぎる。

わずか3ステップでストアを開設できる「STORES.jp」。月額980円の有料プランでは、クーポンやメルマガの発行、アクセス解析などの機能も実装される予定。

 しかし、株式会社ブラケットが8月にリリースした「STORES.jp(ストアーズ・ドット・ジェーピー)」は、従来のオンラインストアの常識に一石を投じるかもしれない。同社が目指すのは「すべての人に、オンラインストアを提供する」ことだ。

 STORES.jpでは、基本料金無料で、法人・個人問わず誰でもが簡単にオンラインストアを開業できる。専門的なウェブ知識を必要とせずにストア構築できる点が最大の売りだ。

「わが国の小売業界におけるオンライン取引の割合は2.5%程度。残り97.5%の小売りはオフラインで行われていて、この多くは中小企業や個人商店によるものです。仮にオンライン化を進めたくとも、独自でオンラインストアを構えるには、技術的にも予算的にも大きなハードルがある。こうした課題を抱える方々に、気軽に無理なく利用していただけるようなサービスを提供したいと考えています」(株式会社ブラケット 代表取締役兼CEO 光本勇介氏)

  “最短2分”という言葉通り、STORES.jpでは、あっという間にストアを立ち上げることができる。店名とサイトのURLを決めて、商品を登録するだけだ。商品の登録は5点までは無料。それ以上の商品を販売したい場合は有料プラン(月額980円)に申し込む。オーダー管理やクレジットカードによる決済など、ストア運営にかかる機能は標準で実装されており、それらも無料(カード決済手数料は5%)で利用できる。つまり、まったくのゼロ円から開業することができるのだ。

「まずはサービスを気軽に利用していただくきっかけを作りたいと考え、5品までの公開・販売を無料にしました。そのうえで、有料会員になっても良いと思っていただけるような、有料会員のみに特化した機能やサービスを充実させていく予定です」(同氏)

 また、ストアのデザインを直感的な操作でカスタマイズできる点も大きな特徴だ。レイアウトや背景、テキスト色などはクリックひとつで選択可能で、デモ画面に瞬時に反映される。テンプレートも豊富に用意されているので、好きなデザインを選ぶだけだ。オリジナリティを打ち出したいのであれば、独自のストアロゴや背景画像をアップロードするのもよい。

 これだけ参入障壁が低くなれば、法人のみならず、個人にとっても利用しやすい。実際に、趣味で制作した小物やアクセサリー、あるいはデジタル素材や自身のスキルなど、従来は見られなかったユニークなアイテムを揃えた店が目立つ。「我々は“ブログのオンライストア版”になることを目指しています」(同氏)という言葉通り、ストアというよりも、個性を発揮する場のひとつとして活用しているユーザーが多いように見受けられる。

 こうした“お手軽ストア”は流行の兆しを見せており、iPhoneだけでストアを構築できる「microStore」や「BASE」といったサービスもある。自分の“売り”を誰もが手軽に販売できる。そうした“一人一店”の時代が来れば、優れた技術を持つ中小企業やクリエイターの発掘にも繋がりそうだ。

(中島 駆/5時から作家塾(R)