世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

アメリカは世界一の原油産出国、なぜ一気に増えた?

アメリカは世界一の原油産出国

 18世紀後半、イギリスで産業革命が起こるまでは水力や風力、畜力(ちくりょく)、薪炭材(しんたんざい)など、自然界に存在するものを利用していました。しかし、これらのエネルギーは弱く、不安定でした。産業革命期、ワットによって蒸気機関が改良されると、石炭の利用が進みました。

 1960年代のエネルギー革命によって石炭から石油へとエネルギーの主力が移行し、1973年の第一次オイルショックを契機に石油に加えて、原子力と天然ガスの利用が進み、また石炭が見直されるようになりました。

 原油とは地下から採掘され、未加工のものを指します。そのため、オイルシェールやオイルサンド、コンデンセートなども原油に分類されます。

 原油は褶曲(しゅうきょく)構造を持つ地層の背斜部に多く埋蔵されており、ペルシャ湾周辺のようなプレートの狭まる境界に多く存在します。下図を見てください。

アメリカは世界一の原油産出国、なぜ一気に増えた?出典:『経済は地理から学べ!』

 エネ研・石油情報センターによれば、埋蔵されているもの、またはそれを採掘したものを「原油」、原油から精製して製品化したものを「石油製品」と定義されています。

 そして、これらを合わせて「石油」と呼ぶことが一般的なようです。原油の産出量(2019年)はアメリカ合衆国、ロシア、サウジアラビア、カナダ、イラクが上位国です。近年産出量が増えているのがアメリカ合衆国です。

 なぜ増えたのでしょうか。躍進のきっかけは「新技術」にあります。