世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
著者は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

日本の「1人当たり労働生産性」は世界37位、1位はどこ?Photo: Adobe Stock

そもそも「労働生産性」って何?

 日本の労働生産性は低いと言われています。本当でしょうか。数字で詳しく見ていきましょう。

「1人当たり労働生産性」という指標があります。これは、実質GDP総額を総就業者数で割って算出した値で、ILO(国際労働機関)による統計です。「労働の成果」を「労働の量」で割ったものであり、労働者1人が生み出す労働の成果を指します。

 日本でも「働き方改革」と称して、長時間労働の是正、業務の効率化による労働生産性の向上などの意識が高まっています。実際に、「日本は労働生産性が低い」といわれることが多く、解決は急務です。

 日本の「1人当たり労働生産性」は7万5384米ドル(2019年)と世界第37位です。

 2012年以降はほぼ横ばいで推移しています。しかし、生産年齢人口(15~64歳の人口)割合は低下の一途をたどっていますので、1人当たり労働生産性は上がりも下がりもしていないのに、労働者だけが減っている状況なのです。

 日本は少子高齢化が進行しているため、中長期的にはさらなる労働力不足が懸念されます。そのためにも1人当たり労働生産性の向上が不可欠です。

 一方、上位国はどこでしょうか。1人当たり労働生産性(米ドル、2019年)の上位国・地域は次のようになります。

1位 ルクセンブルク:19万9367
2位 マカオ:17万8687
3位 ブルネイ:15万9118
4位 アイルランド:15万5654
5位 シンガポール:15万1522
6位 カタール:15万376
7位 ニューカレドニア:13万2228
8位 ノルウェー:12万9989
9位 サウジアラビア:12万2167
10位 プエルトリコ:11万8950
11位 アメリカ:11万6384
12位 クウェート:11万4903
13位 香港:11万2340
14位 スイス:10万6530
15位 ベルギー:10万3779
16位 デンマーク:9万7696
17位 オランダ:9万7622
18位 アラブ首長国連邦:9万7556
19位 フランス:9万6446
20位 チャンネル諸島:9万5413

 1人当たり労働生産性の世界最高はルクセンブルクでしたね。では、どうすれば労働生産性を高めることができるのでしょうか?