躍進のきっかけは新技術
アメリカ合衆国は2008年まで原油の産出量は減少傾向にありました。しかしハイドロ・フラクチャリング(通称フラッキング)と呼ばれる水圧粉砕法技術の開発によって、それまでは困難であったシェール層からの原油や天然ガスの抽出が可能となりました。
2009年からは原油の産出量が増加に転じ、2011年以降に増加の速度が速まり、2017年には世界最大の原油産出国となりました。
それまでの原油の産出量は、サウジアラビアとロシアが世界トップ2でしたが、現在ではアメリカ合衆国が頭一つ抜け出しています。
こうした一連の変化をシェールガス革命と呼びます。このシェールガス革命によって、アメリカ合衆国は天然ガスの産出量も増えました。イラクはイラン・イラク戦争(1980~1988年)、湾岸戦争(1991年)、イラク戦争(2003年)などの影響があり、産出量が不安定でしたが、2005年以降は増加に転じています。
特に最近10年間は、世界の増産量の約5分の1を占めるほどに成長しています。
ポイントは「水の確保」
今後の石油産業の発展には、「油田に注入する水の確保」、「海外資本の導入」、「政情の安定化」が課題と考えられています。特にフラッキングでは、大量の水を使用することから、用水の確保は重要課題の1つです。
黄河では、河川水の過剰な取水により河口付近で断流したこともあり、利用には細心の注意が必要です。そのため、雨季などの降水量が多い時期に取水しておく必要があります。
河川水の利用については「環境破壊だ!」との反対意見もあり、物理的な問題だけでなく、心情的な問題としても課題があるといえるでしょう。
原油の埋蔵量は中東地域だけで世界の47.7%、またOPEC加盟国で世界の70.7%をそれぞれ占めていて、埋蔵の偏在性が大きい資源です。そのため中東地域の政情不安やOPECの産出量の増減などが石油価格に大きな影響を与えています。
(本稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)