世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

日本の貿易額は世界4位、2位と3位はどこ?

日本で急速に少子化が進んだ理由とは?

 世界の貿易額(米ドル、2019年)をみると、1位中国(4兆5778億)、2位アメリカ合衆国(4兆2106億)、3位ドイツ(2兆7233億)、4位日本(1兆4265億)、5位オランダ(1兆3442億)と続きます。

 日本は世界4位の貿易額を誇りますが、日本の金額を100とすると、中国321、アメリカ合衆国295、ドイツ191、オランダ94となります。

 中国とアメリカ合衆国は別ですが、ドイツとオランダの人口は少なく、それぞれ日本の人口の65.80%、13.70%にすぎません。つまり、日本の1人当たり貿易額は、ドイツやオランダよりも大きいとはいえない状況です。

 1人当たりの貿易額(米ドル)は、中国3275、アメリカ合衆国1万2828、ドイツ3万2759、日本1万1298、オランダ7万7556となっています。

 1人当たり輸出額(米ドル)はどうでしょう。日本は5588で、アメリカ合衆国の5006よりは高いものの、ドイツ1万7916、オランダ4万882よりは低くなっています。ドイツやオランダだけでなく、フランス8514、イギリス7028、イタリア8918、ベルギー3万8919、スペイン7095とEU各国よりも低い数値です。

貿易を読むカギは「国内需要」にあり

 これらの大きな要因は人口規模です。日本は1億2626万人(2019年)の人口を有するため、国内需要が大きく、これだけでも十分に経済が成り立ちます。海外需要を取り込むのではなく、国内需要を取り込むことが目的となっている企業も多いのです。

 高い技術力がありながら、海外市場に売り込めていないことが予想されます。「日本の技術力が低く、日本製品が海外市場で求められていない」などということはないでしょう。

 貿易依存度(GDPに対する輸出輸入額の比率)は、一般に資源保有国や新興国で高い傾向にあります。前者は資源供給地となっているため、そして後者は低賃金労働力を武器に、外資を導入して輸出指向型の工業化を進めるため、それぞれ輸出依存度が高い傾向にあります。