8月に入り、イラクでは、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」が北部のクルド人自治区へ攻め込む動きを見せた。こうした事態を受けて、8日に米政府は軍事介入に踏み切った。

 クルド人自治区の中心都市であるアルビルは、治安が良いなどの理由から石油メジャーなどが現地拠点を置いており、米国には米国人を保護する必要が生じたためだ。クルド人の少数派ヤジディ教徒が孤立に追い込まれる中、イスラム国による大量虐殺阻止なども、軍事介入の理由とされた。

 もっとも、このような地政学的リスクの高まりは必ずしも原油価格を押し上げる材料にはならず、むしろ、その後の原油価格は緩やかな下落傾向で推移している。

 そうした中、原油先物市場では、期限が先のものほど価格が安い状態(期先安)が長く続いてきたが、7~8月に変化した。6カ月物あたりをピークに期限が先のものの方が高い価格のカーブ(期先高)を描くようになった。7月以降は、期近物が大きく下落した一方で、6カ月物などがあまり値下がりせず、高止まりしたのだった。