「意識」がこれほどまでに注目されるのは、何故なのか?
脳科学、生物学、心理学、宗教学、哲学、ロボット工学、人工知能工学から、自己啓発やスピリチュアルやライフハックやマインドフルネスまで、本当に様々な分野で、「意識」は重要なテーマとされ、各分野で論文や書籍が出版されてきました。アントニオ・ダマシオ教授が専門用語を抑えてコンパクトに『ダマシオ教授の教養としての「意識」』で展開する解説は、細菌などの原始生物の生物学や心理学、神経科学を発展させた科学者たちの知見から哲学的議論、さらにはAIやロボット工学で展開される感情や意識の研究、果ては私たちの生きる宇宙の議論にまで広がっていきます。
これほどまでに「意識」が注目されてきた背景には、実は特別な事情がありました。
意識すると、物的反応が、どうして心の反応に変わるのか?
その秘密とは?
見たもの、聞いたこと、触ったもの、これらはすべて人間の体の外にあるものなのに、意識することで、どうして苦しみや悲しみ、幸福や心地よさのような心の体験の反応が起きるのか? 体の内外の物理的反応が、どのように心の反応に変わるのか? それらを論理的に説明することがとても難しいことと考えられてきたのです。意識の構造が明確でないことで、意識のしかたで人間の能力に違いが出てきてしまう原因がつかみにくいことも、関心が集まる要因となっていそうです。
これまで数十年にわたって、多くの哲学者や認知科学者は「人間の意識の問題は解決不可能」と断言してきましたが、ダマシオ教授の見解は違います。複数の科学分野にわたる最近の研究成果が、意識とそれをもつ人間にとっての意義を理解する方法を与えてくれたと言うのです。
神経科学、心理学、哲学、ロボット工学といった多岐にわたる分野で、世界でトップクラスの論文の引用件数を誇るダマシオ教授が、多面的な角度からできるだけ専門用語を抑えて解説を加えている本書。しかも、各節がワンテーマで全体としてもコンパクトに書かれており、この分野の本としては最先端の科学的知見が盛り込まれていながら、大変に読むハードルが低く挫折しにくい本になっています。
世界15ヵ国以上で刊行され、ニューヨーク・タイムズ、サイエンスなど各誌で激賞された本書。日本でも脳科学者の茂木健一郎さんが本書を推薦しています。茂木さん自身も意識をテーマとした著作が複数ありますが、本書は「意識から人間に迫る、現代最高の一冊」と評価しています。
感情、知性、心、そして人間の意識という人間の深部に迫る、さまざまなジャンルの読者の関心に応えられる、新しい時代の教養書として読める一冊です。