石川純子
英国メイ政権が打ち出したEU離脱の「新方針」が「強硬離脱」派の閣僚らの大量造反で暗礁に乗り上げた。EUとの交渉も実質3ヵ月後に合意期限が迫る。時間切れの「交渉無し離脱」となれば、世界経済の新たなリスクだ。

英国の欧州連合(EU)離脱交渉で影を落とすのが、総選挙で惨敗した与党保守党の求心力低下だ。移民規制を最優先するのか、EU単一市場へのアクセスを維持するのか、国内でも分裂する中でEUとの「合意なし離脱」の可能性も出てきた。

仏大統領選でも移民排斥、EU離脱が最大の争点になっているが、一足先に離脱を決めた英国では「Brexitの誤算」が語られている。仕事を奪われ賃金が下がると不満が強かった移民が、生産性を高め、英経済の成長や財政に貢献しているということがわかり始めた。移民の流入抑制で、英国が「高インフレ、低成長」に陥る―英国病の悪夢再来ともいうべきか―リスクシナリオが現実味を帯びる。
