新しい部署に異動したAさん。張り切って出勤した初日だったが、帰りの電車ではすっかり暗くなっていた。

 直属の上司の態度がどうもおかしい――。

 まだ右も左もわからないAさんにビシビシと指示を飛ばし、まごついていると、「そんなこともわからないのか」と舌打ちする。質問しても「今、おまえの世話どころじゃない」と取り合ってくれない。

 「大丈夫かなあ、あんな人の下なんて」

 翌日の昼休み、チームの同僚と蕎麦屋に出かけたAさんは、自分の不安が的中していたことを知った。

 「あいつにうつにされた部下はたくさんいるんだ。君も気をつけたほうがいいよ」

 Aさんは困惑を隠せなかった。「どうして上司が部下をうつにするんだよ、しかもたくさんいるってどういうこと?」

チームワークで
クラッシャー上司に立ち向かう

「ハートコンシェルジュ」セラピスト 青山初音氏
「ハートコンシェルジュ」セラピスト 青山初音氏

 部下を潰す「クラッシャー上司」が問題になっている。暴言を吐いたり、横柄な態度をとったり、あるいは徹底的に無視したり。揚句の果てに部下をうつ病にしてしまう。彼らに潰されないためにはどうしたらいいのか?「ハートコンシェルジュ」セラピスト 青山初音氏に聞いた。

 「クラッシャー上司には、優秀で高い業績を上げる人が多い。したがって、立場が上の人が少なくありません。それだけに、自分ひとりではどうにもならないことがある。周囲と一致協力し、チームワークで立ち向かうようにするとよいでしょう」

 「自分が攻撃されていることを誰かに話すのは恥ずかしい」とか、「悪口を広めるようで気が引ける」などと思うかもしれないが、1人で抱えていると悩みはどんどん深くなるばかりだ。早い段階で仲間に打ち明け、味方になってもらおう。

 また、周囲も同僚の受けているいじめを見て見ぬふりをせず、我がこととして受け止めよう。もちろん、「人間として、見過ごすべきでない」ということもある。しかし理由はそれだけではない。なんといっても、クラッシャー上司の攻撃の矛先は、いつどこに向けられるかわからない。そのうちうつ休職者が続出し、職場崩壊するかもしれないのだ。明日はわが身ということもある。誰かがやられているな、と感じたら積極的に助け舟を出すことだ。

 「上司のいじめに遭っている部下は自信を喪失し、孤独感に苦しんでいます。そんなときは身近な人が適切な助言をし、ほめたり、認めてあげたりしてサポートすれば、うつを避けることもできます」と青山氏。