政治の空転こそチャンスだ。改革なんて骨抜きにしてしまえ――。
今、「抵抗勢力」と呼ばれる官僚たちは、突然の福田康夫首相の辞任という好機に、らんらんと目を輝かせている。財政改革と並ぶ国民のための大改革を潰す、これほどのフォローの風はないからだ。しかも、総裁選レースの先頭を走る麻生太郎・自民党幹事長は、以前から政策の役人依存度が高く、霞が関では誰一人知らぬ者がないほど公務員改革嫌い。マスメディアが麻生氏の優位を伝えれば伝えるほど、抵抗勢力はほくそえみ、その陰謀を膨らませている。
福田首相の辞意表明の2日前(8月30日)、総理官邸や財務省、総務省に根城を持つ抵抗勢力(官僚)たちは、ちょっとした勝利に酔っていた。
内閣人事局の骨抜きを
狙った「政府原案」
今春の通常国会で成立した「国家公務員制度改革基本法」に基づいて1年以内に設置される「内閣人事局」について、抵抗勢力に都合のよい省益優先の案を、「政府原案」という触れ込みで、クオリティ・ペーパーのはずの日本経済新聞に報じさせることに成功したからである。
本来、内閣人事局は、公務員を省益の呪縛から解き放ち、誇り高き「日の丸官僚」に昇華させる国家戦略の切り札だ。というのは、現行の公務員制度は、ひとりひとりの公務員について、その採用から天下り、天下りを繰り返す渡り鳥まで、一生を、ひとつの省庁が面倒をみる仕組みになっている。そして、これこそが、省益を国益よりも大切にする「抵抗勢力」を量産する元凶となっているのである。
そこで、国家公務員制度改革基本法は、内閣が、一括して公務員を採用し、省益を超えた機動的・戦略的な人員配置をできるようにするため、内閣人事局を創設することを定めた。
現在、給与、天下りなど官僚の人事関係の権限は、個別の官庁のほか、人事院、総務省人事・恩給局、官民人材交流センター・再就職等監視委員会、内閣総務官室、総務省行政管理局、財務省主計局給与共済課・理財局国有財産調整課の6部局にも分散している。新設される内閣人事局は、これらの6部局を統合し、パワフルな組織にする必要がある。どれひとつ欠けても、首相主導の戦略的な人事配置が不可能になるとみられるからだ。
ところが、前述の日本経済新聞が報じた政府原案は、そうしたパワフルな組織とは似ても似つかない。同案の内閣人事局は、首相直属の組織にはなっているものの、人事・恩給局と行政管理局という総務省の旧総務庁系の2局だけを切り出して、ミニ総務庁として再建するような内容となっているのだ。しかも、400人などともっともらしく人員の規模まで明記されていた。