石破人事に反主流派が宣戦布告、因縁の安倍派とは「最終戦争」へ9月30日午後、東京・永田町の自民党本部において、新執行部の発足を受け、記者会見する自民党総裁の石破茂 Photo:JIJI

「予算委員会を開こうと言ってくれる人が一人もいなかった」。第102代の首相に就任した石破茂は10月1日朝、臨時国会での首相指名選挙に臨む前、側近に苦しい胸の内を吐露した。そこには新しい日本のリーダーになるという高揚感はなく、自身が置かれた厳しい党内状況に対する危機感がにじんだ。石破は前日、自民党の新総裁として異例の衆院解散宣言を行った。

「条件が整えば、10月27日に総選挙を行いたいと考えている」

 石破は原理原則に従って頑固に自説を貫き通してきたことで、国民世論の根強い支持を得てきた。自民党総裁選でも、野党との国会論戦を経て解散に踏み切るべきだとの意向を繰り返した。当然、石破は集中砲火を浴びた。

「変節」「手のひら返し」「石破の豹変」。石破が最も耳にしたくない言葉の礫(つぶて)が飛んだ。

 しかし、石破には反論できる理由が見つからなかった。総裁選の薄氷の勝利を収めた石破には、「首相の大権」である解散権も手になかったからだ。

 9人の候補が乱立した総裁選は結末まで極めて劇的だった。最後は石破と前経済安全保障相の高市早苗の決選投票にもつれ込んだ。1回目の投票では石破は154票、対する高市は181票。これを決選投票で石破が大逆転した。石破の215票、高市は194票。その差はわずかに21票。しかも事前の予想では圧倒的に石破優位とみられていた地方党員・党友票で、僅差とはいえ高市がトップに立ったことは予想外の展開だった。