リンゴはみずみずしく、さわやかな甘味。ラ・フランスは香り高く、とっても濃厚。グルメ取材でありません。民営郵政の実態を知るべく、新潟県の民家や農園を突撃訪問してきました。民営化に伴う集配郵便局再編でとくに影響を受けたのは離島の佐渡市。17局のうち6局が集配をやめてしまいました。
島内の果樹農園経営者宅を訪ねると―。
「週刊ダイヤモンド?何だやそれ。遠いとこからよくまあ。ウチのリンゴ、おあがんなさい」
「シャリシャリ。おいしいです!シャリシャリ。シャリシャリ。あ。実は民営化郵政を検証する取材をしておりまして」
「んっ!郵政!?」
“郵政”の言葉を耳にすると、穏やかな表情は、厳しいものに。
「われわれ地方の人間は、切り捨てられた。農協の支店がなくなり、学校もなくなり、そして郵便局。最後の砦だったのに」
最寄りの郵便局が集配をやめたために、今まで以上に朝一番で出荷しないと、首都圏への翌日配達に間に合わなくなりました。この農園ではリンゴの集荷をヤマト運輸に任せることにしました。
別の果樹農園経営者。
「ここは年寄りが多い地帯。郵便局員さんにお金をおろしてもらったり、用事を頼んでいた。電球の交換なんかもね(笑)。親切だった局員さんも、今はあれをやっちゃだめ、これもだめと規則に縛られダルマ状態。“民営化”といったら、いろんなことができるイメージだけど、実際は逆。馴染みの局が集荷しなくなったから、荷物はヤマトに頼んでいるよ」
郵便局のお得意さんだった佐渡の農園はごっそりとヤマトに集荷依頼を変更しています。佐渡だけではありません。全国各地で同様の現象が起こっています。
郵政民営化を大検証する今週号「『郵便局』を信じるな!」では、列島縦断ルポを敢行し、地方切り捨ての実態に迫りました。
苦しんでいるのは郵便局員も同じです。来年の年賀ハガキの販売ノルマは40億枚。売るのも大変ですが、アルバイトも十分に集まらないまま無事届けられるのか。まさに「年賀状地獄」です。
ハガキや投資信託、簡易保険の販売ノルマで郵便局員は疲れ果て、行き過ぎた効率化によって職員の犯罪・不祥事は多発。本誌記者が郵便局内部に潜り込み、現場の悲鳴を伝えています。
上場を計画する日本郵政グループが設立した社員持株会の裏側など本誌スクープも満載!そして特集のクライマックスは、日本郵政・西川善文社長のロングインタビュー。泣く子も黙る元カリスマバンカー西川氏が胸中を激白しました。
本特集班の結論。「郵政民営化が日本を不幸にします」
(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)