多様なプロジェクトで拡大する市場
本稿では、近年拡大基調にある海外インフラファイナンスについて、伝統的な鉄道分野のPPP(公民連携)から派生した鉄道車両リースと、新興のインフラアセットである光ファイバープロジェクトを例に解説する。
インフラ分野を対象としたファイナンスは、1990年代にオーストラリアや欧米諸国における公共インフラの民営化の流れを受けて多く組成されるようになった。以降順調にマーケット規模が拡大し、取り組みを行う金融機関の裾野も拡大している。投融資対象の観点でも、従来は再生可能エネルギーが中心であったが、PPPを含む交通インフラ分野の組成も増えているほか、デジタル分野など新たにインフラとして認識されるアセットも登場し、多様化が進んでいる。
インフラの融資対象としての特徴は、長期安定的なキャッシュフローが見込めるアセットであり、インフレ等のマクロ環境の変化への耐性を有していることにある。伝統的には、長期のオフテイク契約(事業会社が生み出すサービスの購入を定めた契約)に基づくプロジェクトファイナンスが中心であった。しかし近年は、規制業種であることなどを背景とする事業の独占性によって安定収入を確保するビジネスモデルや、複数プロジェクトを自社のバランスシートで運営する開発事業者(プラットフォーム企業)に対する融資も、広義のインフラファイナンスと認識されつつある。
特に海外インフラファイナンスでは多様なプロジェクトの組成が進んでおり、日本市場への応用が進んでいる領域も存在する。例えば近年、データセンターにおいて大規模プロジェクトの組成が進むが、海外市場と同様、メガクラウド事業者を主要テナントとするため、日本でも同様のフォーマットに基づくファイナンスが組成されつつある。