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JAPANなニュース 英語メディアが伝える日本

200億個目のツイートは日本語だった 偶然という名の必然か

加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]
【第9回】 2010年8月4日
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英語メディアが伝えるJAPANをご紹介するこのコラム、今週の日本はつらいニュースが多すぎるので、少しゆるい話題にします。Twitterで記念すべき200億個目のツイート(つぶやき)をしたのが日本人で、あちこちのメディアが伝えたという話です。200億個目は日本語だったので肝心の内容が全く読めないながらも、世界各地から「おめでとう!」コメントが殺到しました。世界中で使われているTwitterですから、たまたま日本人だったのですが、たまたまの背景にはそれなりに理由があったようです。(gooニュース 加藤祐子)

200億個目は「それなりに意味のあること」

 Twitterが1日に発表したところによると「Around Shimokitazawa(下北沢の近辺)」にいる日本人のピロアツさんが8月1日午前0時44分に送ったツイート(tweet)が、栄えある200億個目でした。一目瞭然なヤクルトスワローズ・ファンの方です。

 「ということは、連発した分、あとでごそっとくるかも…w」という200億個目ツイートについて、英『ガーディアン』紙は、日本語だというのもさることながら、「会話の一部だったので、意味がとても分かりにくい」と。私も翻訳で糊口をしのぐ一人として、「自分が仕事として、これを翻訳しろと言われたら困るなあ」と思いました。

 そして苦労しただろう同紙の英訳は、「So that means the barrage might come back later all at once」。

 戯れにこれを私が(文脈を何も知らないことにして)日本語に(固めに)再変換してみると、「つまり、後から一気に集中砲火を浴びるかもしれないということだ」や、「ということは、後からドッと連射されるかもしれないわけだ」になりました。「うむ、さすれば、後に一気に襲ってくるやもしれんのう」……では、戦国武将ですが。この翻訳日本語からもとの日本語まで戻る道のりは、かなり遠い。英語訳の「might come back later all at once」から「ごそっとくるかも」への道のりは特に、とても遠い。なので、翻訳者としては少し目が遠くなりました。『龍馬伝』のような幕末モノを観ていて、「いったいこの時代どれほどの誤訳とそれにもとづく誤解があったのだろう」と思うと気が遠くなる感覚と、少し似ています。

 閑話休題(と、つい使いたくなる司馬ファン……)。

 ITサイト『PCmag.com』は、200億個目ツイート達成は「それなりに意味のある (fairly significant) 成果」だと書いています。

 「fairly significant(それなりに大事な、意味のある)」という形容がミソだと思います。2006年7月にTwitterが開始して以来200億個目のメッセージ達成への評価として。大事なんだけれども「very significant(とても大事)」とか「really significant(本当に大事)」ではなく、「それなりに」という。

 とはいえ、200億というのは、日本国内のほぼ全員が200回何かを書いたことになるわけですし。東京都民全員が153回とか。ためしに見てみたら、非常に不熱心な私のTweetはまだ400個くらいしか書き込みがなかったですし、自他共に認めるTwitter中毒だったイギリスの有名俳優でも6000超。

 『PCMag.com』によると、Twitterのサービス開始当初は1日平均5000ツイートだったのに対し、今は1日5000万ツイート。もしくは毎秒600ツイート。そりゃあ、クジラがやたらと出てくるのも無理はない(アクセス過多など何らかの理由でTwitterが通常どおりに使えない時は、画面にクジラが出てくるのです)。

無意味なたわごと、なのだけれども

 『ガーディアン』は記事冒頭、Twitterはネット上に「pointless babble(無意味なたわごと、無駄話)」をまきちらしているだけと批判されてきたし、「200億個目のメッセージも批判に対する反論にはなっていないが」と前置きしつつも、200億個目ツイート発表後に、ピロアツさんのところに世界中から「おめでとう」ツイートが寄せられた様子などを紹介。今の時点で見に行くと、ツイートが相当増えていて全体を把握しきれませんが、アルファベット(ローマ字というかラテン文字というか)だけでなく、私もまったく読めない文字でのコメントもたくさんあり。Twitterが実に実に世界的メディアなのだと思い知らされます。

 たくさんのツイートを見ていくと、ピロアツさんが騒ぎに戸惑いながらも一生懸命返事をしていくなかで、Swallowsファンであることが日本人以外にも伝わっていき、Swallowsというのは日本のプロ野球チームであることが伝わり、そのうちには外国からも「自分もスワローズ・ファン」という書き込みが入るようになっていきます。さらには「僕はハルキ・ムラカミのファンなんだ」というイギリスからのコメントに、「村上春樹もスワローズ・ファンなんですよ」と英語で返事したり。

 ネット上で世界中のまったく知らない同士が共通の話題や興味をサカナに集いあうのは、今やまったく珍しい光景ではなくなりました。その中にあってもこの「20 billonth tweet」の盛り上がりの場合、「Twitterをやっていて、200億個目ツイートは注目すべきだと思う」という以外の共通項がない人たちが、うわーっと会話していく姿が、実になんとも21世紀だなあと思うわけです。

 ちなみに『ガーディアン』いわく、日本発のツイートというかつぶやきは、全体の12%を占めていてアメリカ発に次ぐ2位なのだとか。報道されているように、Twitterの秒単位のツイート数が最多を記録したのは、サッカーW杯の日本対デンマーク戦の後だったそうですし。200億個目のツイートを日本人が踏んだのはもちろんまったくの偶然ですが、偶然というのは実は細かな必然の積み重ねだったりするなあと思いました。

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加藤祐子 [gooニュース編集者、コラムニスト・翻訳家]

1965年東京生まれ。小学校時代を米ニューヨークで過ごす。英オックスフォード大学修士号取得(国際関係論)。全国紙社会部と経済部、国際機関本部、CNN日本語版サイト編集者(米大統領選担当)を経て、現職。2008年米大統領選をウオッチするコラム執筆。09年4月に「ニュースな英語」コラム開始。訳書に「策謀家チェイニー 副大統領が創った『ブッシュのアメリカ』」。

 


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