厳しい指導をすべて虐待とみなすモンスターペアレンツに萎縮するあまり、現代の学校現場では、子どもへ適切な教育ができなくなってきている。しかし、そうした配慮をしすぎた教育では、子供の自己コントロール力が育たず、大人になってからの不健康、低収入、犯罪リスクが高まるという。子どもの忍耐力や協調性を育てるためには、どのような教育環境が望ましいのか。本稿は榎本博明『学校 行きたくない 不登校とどう向き合うか』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
教師が厳しく注意すると
親が文句を言ってくる時代
虐待が深刻な社会問題になっていることから、子どもの心を傷つけてはいけない、だから子どもに厳しいことを言ってはいけないといった風潮が世の中に広まっている。
だが、子どもに社会性を身につけさせてやりたい、社会の厳しい荒波を乗り越えていけるように強い心をもたせてやりたい、頑張ってもなかなか思い通りにならないなど挫折を経験してもくじけないように心を鍛えてやりたい、などといった親心から子どもに厳しいことを言うのと、親の身勝手で子どもを虐待するのとは、まったく異なる。
それにもかかわらず、そこのところを混同し、子どもの心を傷つけてはいけないということばかりが強調されるようになってきた。そんな風潮のせいで、親も幼稚園や学校の先生も子どもたちに厳しいことが言えなくなっている。
幼稚園や学校の先生たちの多くは、そんなことでは子どもたちが将来困ると懸念しているのだが、うっかり厳しいことを言うと、そうした世間の風潮に染まった保護者から、「子どもを傷つけないように、ほめて育てることが大事だといわれる時代に、なんてことしてくれたんですか!先生から叱られて傷ついた、学校に行きたくない、って言ってます」などといったクレームが入ったりする。