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FOMC声明よりも侮れない新興国の通貨安定策
「勝者なき為替戦争」で日本が被る致命的な打撃

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第144回】 2010年9月28日
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 現在の為替市場では、激しい通貨戦争が繰り広げられている。欧米などの先進国は、バブルの後始末で景気の低迷が続いているため、ドルやユーロなどの安政策を採って、自国の景気を刺激する姿勢を示している。

 一方中国は、依然厳しい通貨管理体制を緩めていない。また、一部のアジア諸国やブラジルなどの新興国も、自国通貨が急激に上昇することを阻止するため、多額の為替介入を実施し続けている。まさに世界は「通貨戦争」の様相を呈している。

 その通貨戦争の中心に位置するのが、米国だ。先日公表された米国の連邦公開市場委員会(FOMC)の声明を見ると、米国経済の行方が依然、不透明であることがよくわかる。

米国の通貨安政策が一段と鮮明化
FOMC声明で強まるドル売り不安

 またFOMCは、「必要があれば、さらなる緩和措置を実施する用意がある」と明言している。景気低迷が続いて一段の緩和策の実施が見込まれると、ドルがさらに軟化する可能性は高い。EUも、ユーロ安を容認する姿勢を鮮明化しており、今回の通貨戦争に参戦している。

 それに対して韓国やブラジルなどは、従来から強力な為替介入を行なっており、厳重な為替管理体制を敷いている中国と共に、自国通貨が上昇することを力づくで阻止するスタンスを続けている。

 そうした状況下、最も大きな痛手を受けているのは、わが国の産業界だろう。欧米諸国の通貨安政策と、新興国の強力な為替介入に挟撃されて、国際市場での競争力低下は避けられない。

 今後、さらに円高が進むようだと、景気の先行きに一段と不透明感が出る。為替戦争の趨勢は、わが国経済にとって最も大きな要素だ。 

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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