日本の鉄鉱石はどこから? 日本の命運を握る「超意外な国」とは?
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

日本のエネルギー問題を考える
「いかに軍備を整えようとも、食料とエネルギーが途絶えれば国家は一瞬で瓦解する」
国家にとっての安全保障を考えるうえで、最も重要なのは食料とエネルギーではないでしょうか。日本はこれらの多くを輸入に依存しています。輸入先との関係性だけでなく、世界情勢の変化を受け、資源の輸送ルートの安全確保が日本経済にとって重要な課題となっています。その日本が、各種資源をどこから輸入しているのかご存じでしょうか?
鉄鉱石:オーストラリアとブラジル頼み!
鉄鉱石と石炭から作られる鉄鋼は「産業の米」といわれ、あらゆる産業にとって基礎資源となるものです。鉄鉱石の産出量は16億5000万トンで、すべての鉱産資源の中で最大です。
日本の輸入相手先は、オーストラリアとブラジルだけで87.0%(2023年)を占めていて、以下カナダ、南アフリカ共和国、アメリカ合衆国と続きます。特にオーストラリアのピルバラ地域からの輸入が盛んであり、東南アジアを通ってわが国へやってきます。
どこを通ってやってくる?
日本は周囲を海に囲まれた海洋国家であり、エネルギーや鉱産資源の輸送はすべて海上輸送に依存しています。特に東南アジアを中心としたシーレーンは、わが国の資源輸送の大動脈として非常に重要です。オーストラリアからの鉄鉱石、LNG、ペルシア湾からの原油などの資源は、すべて東南アジアを通過する海路を利用して運ばれています。東南アジア諸国との外交関係が悪化すれば、資源供給に支障をきたす可能性もあります。
さらに、ミクロネシア地域、特にパラオの存在も重要です。パラオは、太平洋の重要なシーレーン上に位置しており、日本からの輸送船が通過するさいに不可欠な海域にあります。パラオを含むミクロネシア地域の安定した航路確保は、日本の資源供給のリスク管理の一環として重要です。
また、この地域には、グアムや北マリアナ諸島といった米国領も含まれます。先の大戦では、この地を巡ってアメリカ合衆国と戦いましたが、現在は協力してこの地を守っていかなければなりません。時代が変われば正解も変わるのですから。
(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)