いつも謙虚で控えめなのに、なぜか一目置かれる人がしていることとは? 世界で話題となり、日本でも20万部を超えたベストセラー『「静かな人」の戦略書』の著者、ジル・チャンが待望の新作を刊行。謙虚な人ならではの作戦を伝授する『「謙虚な人」の作戦帳――誰もが前に出たがる世界で控えめな人がうまくいく法』だ。台湾発、異例のベストセラーとなっている同書より、特別に内容の一部を公開する。

「メンタルがいつも安定している人」が口グセにしている“超短い一言”とは?Photo: Adobe Stock

「準備万全」まで待ってはいけない

 はっきり言おう。準備が整う日なんて永遠に来ない!

 求職、転職、復職、昇進、創業、何でも同じだ。あなたの頭のなかには「まだ準備ができていない」という声が聞こえてくるだろう。

 でも知っているだろうか?

 ほかの人だって準備なんかできていないのだ。

 だから目を閉じ、歯を食いしばって「よし、やってみよう!」と声に出す。これでもう半分勝ったようなものだ。

「失敗」より「後悔」のほうがつらい

 では、どうやって決断を下せばいいのだろうか?

 アメリカの起業家ジム・ローンは、「人生には2種類の苦しみがある。訓練の苦しみと、後悔の苦しみだ。訓練の苦しみのほうが軽く、後悔の苦しみのほうが重い」と述べている。

 台湾大学の葉丙成(イェ・ビンチェン)教授も同じことを言っていた。

 あれは私が彼に招かれて、台湾大学の授業でスピーチをしたときのことだ。

 その年、彼のスタートアップ企業に郭台銘の永齢基金会が600万米ドルの投資をしてくれたが、資金の半分を費やしても、いまだ収益を出せていないと彼は話した。

 彼にのしかかるプレッシャーは相当なもので、悪夢にうなされて飛び起きることもあるという。あるときなど、週刊誌の表紙に「資本はゼロに! 台大教授のスタートアップが郭台銘の2億元を溶かす」と大きく書かれている夢まで見たそうだ。

 いっそ残り半分の資金を返還して、失敗を認めて幕引きにしようかとも考えたという。

 だが彼は、やはり最後まで戦うと決めた。

 その後、彼の企業は生き残れたばかりでなく、いまやひときわ精彩を放つ存在になっている。彼は言った。

「失敗や恥をかくこと、週刊誌に書かれることより何より“後悔”のほうがつらいってわかったんだ。過去は絶対に変えられない。もし全力を尽くす前にあきらめてしまったら、その後の人生でずっと『あのときもっとがんばっていたら』という気持ちから抜け出せない。それはきっと失敗することより何倍も苦しいよ」

「この一言」が言えれば、勝ったも同然

 なかには絶対に無理だと思って、やらないこともあるだろう。

 たとえばあこがれの企業が、5年以上の経験者、マネージャーの経験があればなおよし、という条件で欠員募集をしたとしよう。

 このときあなたに2年の経験しかなく、マネージャーになったこともなかったとしたら、きっと「無理だ」とあきらめて履歴書を送ることもしないだろう。

 だがアメリカと台湾で1000を超える履歴書と数百を超える面接を見てきた経験から言うと、最終面接に呼ばれる人は、応募条件の6割ぐらいしか満たしていないことが多かった。アメリカにいたっては、そんな応募条件を満たしていない応募者が、待遇について条件交渉までしてくるのだ!

 ここであらためて強調しておこう。

 新たな挑戦に踏み出すにしろ、覚悟を決めて慣れ親しんだ職場を離れるにしろ、「よし、やってみよう!」と声に出すのだ。

 これだけであなたはもう半分勝っている!

(本記事は、ジル・チャン著『「謙虚な人」の作戦帳』からの抜粋です)