地方自治体における“町おこし”の形が変わりつつある。
従来、町おこし(地域の活性化策)と言えば、リゾート開発やご当地グルメの発信、あるいは特区の設置や地域ブランド化などが主な手法だった。
だが、急速に進む過疎化や少子高齢化により、今や活力を失って財政赤字に陥る自治体が急増している。このような自治体が、従来のような町おこしで活気を取り戻すのは、かなり困難な状況にあるのが現状だ。
そんな苦境に追い討ちをかけているのが、昨今の大不況。小自治体ばかりか都市部でも失業率は上昇の一途をたどり、頼みの綱だった地域の基幹産業までもがバタバタと倒れ始めた。
そんななか、地元をなんとか復活させるべく、自治体関係者は“新たな町おこし策”の考案に、日夜悩み続けているのだ。
では、こんなご時勢でも大きな成果を上げている町おこしには、どんなものがあるのか? 具体的なケースを紹介しよう。
まず、最近で最も成果を上げた町おこしといえば、やはり東国原英夫知事就任以降の“宮崎県PR”だろう。その効果は抜群で、東国原氏の知事就任後、たった一週間で「経済効果は165億円」と試算されたほどだ。就任から2年たった今でも、彼がマスコミで宮崎県の特産品をPRし続ける姿に変わりはなく、“宮崎ブーム”はずっと続いている。
この影響は、当然地元にも追い風をもたらしている。顕著な例としては、2001年に破綻し、経営再建中の大型リゾート施設・シーガイアが挙げられる。07年度決算では営業利益2億2200万円を計上し、施設オープン以来初の営業黒字を達成したほどだ。
この宮崎県のように、全国的に知名度が高い自治体の長が率先してパフォーマンスを行なってくれれば、それに越したことはない。しかし、そんな条件に恵まれた自治体は、そうそうあるものではないだろう。有名人の知名度に頼らずに成功したケースは、あるのだろうか?
その成功例の1つとして、“アニメ”で町おこしを行なった埼玉県鷲宮町のケースが挙げられる。
ブームのきっかけとなったのは、07年に放映されて人気を博したアニメ「らき☆すた」だった。この作品のオープニングの舞台として、鷲宮町にある鷲宮神社の鳥居と大酉茶屋が描かれていたことが注目され、同作品のファンが鷲宮神社に来訪し始めたのだ。
これを好機と見た地元商工会は、同作品の版元である角川書店にかけ合い、声優陣などを招いた公式参拝イベントやファン向けグッズ販売などのタイアップ企画に打って出たのである。