ニュージーランドの景気急減速、中銀は大幅利上げから一転してハト派にPhoto:PIXTA

中央銀行であるニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、大幅利上げでインフレの抑制に成功した。しかし、足元では景気減速に拍車がかかっている。8月に利下げに転じたが、今後もハト派姿勢を継続しそうだ。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

大幅利上げでインフレは鈍化も
景気は冷え込む

 ニュージーランドではここ数年、コロナ禍一巡による経済活動の正常化や国際商品市況高騰に加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ニュージーランド(NZ)ドル安に伴う輸入インフレも重なり、インフレ率が大きく上振れしてきた。

 さらに、金融市場ではコロナ禍対応を目的とする異例の金融緩和がカネ余りを招くとともに、生活様式の変化も重なる形で不動産価格も大きく上振れするなど、バブルが懸念される状況に陥った。

 こうした事態を受けて、中央銀行であるニュージーランド準備銀行(RBNZ)は物価高と通貨安の抑制、不動産市況の鎮静化を目的に累計5.25%の利上げに動いた。

 インフレ率は一時前年比7%を超え、30年ぶりの高水準となったが、その後は低下した。ただ、しばらく目標域(1~3%)を上回って推移し、物価高と金利高の共存が景気を下押しする展開が続いた。

 また、最大の輸出相手である中国の景気減速などが外需の重しとなるとともに、台風襲来や熱波による高温など最近は異常気象が頻発していることも、幅広い経済活動の足かせとなった。そのため、景気は力強さを欠く推移が続いている。