コンビニエンスストア業界最大手、セブン-イレブン・ジャパンに対し、公正取引委員会が優越的地位の濫用で排除措置命令を下した。背景にあるのは、商品廃棄コストを加盟店が負担するシステム。加盟店との「共存共栄」をうたってきた同社だが、その意味をあらためて問い直すときにきている。
「われわれは一物二価になってはいけない。あっちの店は安くてこっちの店は高いじゃ、消費者の信頼が得られない」(鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO)。
コンビニエンスストアを日本に広めた“コンビニの父”は、常々こう語っているが、ついにその信念は通用しなくなった。
6月22日、公正取引委員会はセブン-イレブンの加盟店オーナーが消費期限の近づいた弁当などを値下げして売る「見切り販売」をセブン-イレブン(本部)側が制限したことは、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)に当たるとして排除措置命令を下した。
オーナー側からは「大変うれしく思う」と公取委の処分を歓迎する声が続々と上がった。オーナーの団体である全国FC加盟店協会は、「審決は当然であり、むしろ遅過ぎた」と見解を発表した。
一方、本部は、「命令は真摯に受け止めるが、加盟店と本部は対等な関係にあるととらえており、本部が優越的地位にあるとは考えていない」(井阪隆一・セブン-イレブン・ジャパン社長)と公取委と認識のズレがあると主張。24日段階では、「命令を受け入れるかどうかも含めて検討する」(同)と態度を保留している。
本部とオーナーで一致しない利益目標
値下げして一つでも多く売り切りたいオーナー、定価で販売させたい本部──。
両者の食い違う主張の原因は、コンビニの会計システムを理解すると納得がいく。
コンビニのビジネスはフランチャイズ(FC)契約のうえに成り立っている。
本部(セブン-イレブン)はオーナー(加盟店)とFC契約を結び、本部はオーナーに対して店舗運営指導を行なう。本部はその対価としてロイヤルティを受け取り、オーナーは店舗運営に専念する。
ロイヤルティは、売上高から売れた商品の仕入れ原価を引いた粗利益に、一定の率を乗じて算出される。粗利益をオーナーと本部が分け合う仕組みになっている。
ただ、ここで重要なのは「消費期限の過ぎた商品の廃棄コスト(原価)は全額オーナーの負担となる」という点だ。オーナーは本部と粗利益を分け合った後、自分の取り分から廃棄コストを出す。