相談相手になりきれない上司
孤独感から肩に力の入る女性部下
「優秀な男性部下が相手だと、女性上司だからダメなんだと思われたくなくて、何でもかんでも自分で判断や指示をしなくてはと、頑張りすぎていました。本当は、融資業務の経験が少ないので、融資畑を歩いてきた部下にもっと頼れば良かったんですけどね」
とあるセミナーで出会った金融機関の女性支店長が、管理職になりたての頃を振り返り、こんな風に語っていました。
男性であればじっくりと経験を積ませるところを、女性活用を急ぐ企業が、転勤をなくした管理職ポストを作ったり、経験していない職務について短期間で研修を行ったりして急成長させようとしているという背景もあり、「女性だから管理職になれた」と思われたくないと、必要以上に肩に力が入ってしまうのでしょう。「自分がロールモデルになっている」「後輩の女性たちの命運も自分が握っている」といった自負も、励みになる一方で、負担にもなっているようです。
上にいくほど相談相手が少なくなり、孤独になるという点では、男性も女性も同じです。ただ、男性の場合には、身近に何人もの同性の管理職がいますし、会社の枠を外せば管理職・経営者セミナーや勉強会など、立場を同じくする男性中心のネットワークが存在します。
しかし、女性管理職にはこの「相談相手」がいないのです。ただでさえ長く勤務している女性が少ないのに加え、管理職にまで昇進している女性は自分が初めて、という状況も珍しくないからです。さらに、横並び意識の強い同僚女性から「何であの人だけが」と妬まれたかと思えば、同僚男性には「女はいいよな」とやっかまれ、頼みの上司からは「女性のことはよくわからない」と腫れ物に触るように扱われ、「女性管理職ゆえの孤独」をいやというほど味わっています。
新聞の悩み相談コーナーに、そんな彼女たちの孤独感がヒシヒシと伝わってくる記事を見つけました。相談者は、会社で部長職にあるという40代の女性。仕事はやりがいがあって何ひとつ不満はないが、同僚の男性から飲みに誘われることがなくなった。彼らに誘われて一緒に飲みに行く、若手の女性社員たちがうらやましい……と言うのです。
女性だから管理職になれたと思われたくない、孤独で相談相手がいない、あとに続く女性たちのために自分が頑張らねばならない……。こうしたさまざまなプレッシャーから、「弱みを見せるとナメられる」「女は公私のケジメがないと言われないよう、部下とのあいだに境界線を引かなくては」と、管理職になりたての女性は肩に力が入ってしまうのです。