日産 消滅危機#29写真提供:日産

トランプ関税、格下げによる資金調達環境の悪化、構造改革の骨抜き――。日産自動車は崖っぷちに立たされている。株式市場の評価も厳しく、時価総額はわずか1.2兆円(世界同時株安の影響もある)。安過ぎる日産に、国内外の事業会社・ファンドが群がる事態になっている。それでも、まだ日産にもいちるの望みがある。その鍵を握るのが、再建を支援するパートナー戦略だ。特集『日産 消滅危機』の#29では、日産に残された「6つの再建シナリオ」を公開する。トヨタ対抗軸を結成する大逆転シナリオとはどのようなものなのか。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

盟友ルノーのルカ・デメオCEOは
日産と完全に縁を切るつもり?

 3月31日、日産自動車と仏ルノーグループが、アライアンス契約の改定に合意し、双方が相互に持ち合う株式保有率の最低基準を15%から10%へ引き下げることで合意した。

 現在、ルノーは日産株を約36%(信託を含む)保有し、日産はルノー株を15%保有している。改定により、互いの最低出資比率が10%まで下げられることになった。

 これにより、両社はさらに株式を売却しやすくなり、両社の関係はより希薄になった。日産関係者によると、「ルノー最高経営責任者(CEO)のルカ・デメオ氏は、日産と完全に縁を切る方向へ進んでいる」とのことだ。

 日産にとって、これはむしろ恵みの救済措置ともいえる。財務の悪化に苦しむ日産にとって、ルノー株の売却で得られるキャッシュは貴重な資金源だからだ。

 同時に、日産はルノーにインドの合弁会社を売却し、インド生産からの撤退。さらに、ルノーの電気自動車(EV)会社アンペアへの出資も撤回した。これにより、1999年以来続いた盟友との距離は開いていくばかりだ。

 日産の新社長に就任したイヴァン・エスピノーサ氏は、記者会見で「ホンダを含め、オープンにさまざまなパートナーとの可能性を探る」と発言した。

 ところがその言葉とは裏腹で、ある日産幹部によると「エスピノーサ氏は、日産単独での自主再建も一つの選択肢だと考えている」という。一方、社長の座を争った最高財務責任者(CFO)のジェレミー・パパン氏は、完全子会社化をのんででもホンダとの協業を進めるべきとの立場を取っていた。

 果たして、日産が進む道はどう決着しそうなのか。次ページでは、日産に残された「6つの再建シナリオ」を公開する。

 トランプ関税、格下げによる資金調達環境の悪化、構造改革の骨抜き――。崖っぷちに立たされている日産だが、再建を支援するパートナーの選定次第では、いちるの望みも残されている。6つのシナリオの中で、トヨタ対抗軸を結成する大逆転シナリオとはどのようなものなのか。