建設機械のハイブリッド化と普及は、中国から始まるようだ。

 建機世界2位のコマツは、ディーゼルエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド油圧ショベルの生産、販売を本格化させる。

 ハイブリッド機は旋回するショベルが減速する際のエネルギーを電気に変換して蓄電し、再利用する仕組み。昨年開発が完了し、試験運用では平均で25%、旋回の多い仕事では40%もの燃費改善効果が得られた。

 従来機に比べ約5割も高いハイブリッド建機だが、注目点はコマツが主戦場を中国に選んだこと。コマツは年間700台を生産予定だが、そのうち500台が中国向けで、全量を現地生産する。

 中国を重視した理由は2つ。第1は中国の建機市場の好調さだ。建設不況が深刻な日本と異なり、中国市場は米国発の金融危機の影響は一時的で、足元の建機販売台数は昨年のピーク時に並ぶ勢いだ。しかも、政府による約50兆円もの景気刺激策による公共工事はこれから本格化する予定だ。

 第2は、経済合理性からくる強烈なニーズだ。

 たとえば20トンクラスの油圧ショベルの運転コストを見ると、日本では建機オペレーターの人件費と燃料費の割合が4対1となる。ところが人件費が安く、それでいて燃料代は日本の8割程度の中国では、同1対5と逆転するのだ。

 しかも、中国では24時間稼働が日常的で、建機の稼働時間は日本の2.5倍にもなる。つまり中国ではハイブリッド建機の導入は、建設会社など建機オーナーの収益に大きく直結する。中国におけるハイブリッド建機導入の経済的メリットは、ハイブリッド自動車の比ではないのだ。

 この点は“環境”を意識して購入するケースが多い日本とは事情が大きく異なるが、中国人の実利志向がハイブリッド建機の量産を促し、普及と低価格化の原動力になりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)