「お忙しいところすみません」と言われたとき、無愛想な人は「はい」と答える。感じのいい人は何と答える?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「接遇」の基本姿勢
「出迎え3歩、見送り7歩」という言葉を聞いたことがありますか?
出迎えの際には3歩前に出て歓迎の意思を伝え、見送りでは7歩一緒に進んで名残惜しむ。接遇の基本姿勢です。
私が行う接遇研修でも、この考え方を深く掘り下げ、特にロールプレイングに時間をかけています。
ただ、この「出迎え3歩、見送り7歩」は、対面の場面だけに限りません。
「歓迎の気持ち」を伝えよう
ある、私が経験した電話の例をご紹介します。
アメリカに住む友人が一時帰国することになり、それまで何度か訪れて好印象を持っていた老舗料理店を予約しようと思いました。
予約は電話のみとのことで、忙しい時間を避けて連絡したのですが……。
「お忙しいところすみません」と切り出した私に対し、返ってきたのは無表情な「はい」の一言。
「今週土曜日に2人で予約をお願いしたいのですが、お料理について少しお尋ねしてもいいですか」と続けると、「どうぞ」と投げやりな返事。
以降のやりとりも終始そっけない態度で、最終的に私はその店での予約は見送りました。
電話の最後には、「失礼します」の「す」が終わる前にプツリと切られ、その瞬間、「出迎えマイナス3歩、見送りマイナス7歩」のように感じてしまったのです。
かつては、あんなに感じが良かったのに、いったいこのお店に何があったのだろう?と、残念な気持ちになりました。
ただ、こうした体験は学びの宝庫です。
さて、あなたなら「お忙しいところすみません」や「ちょっとお尋ねしたいのですが」と言われたら、どのように返答しますか?
たとえば、「お忙しいところすみません」に対しては、笑顔で「いえ、ご連絡ありがとうございます」と返すだけで、相手に歓迎の気持ちが伝わらないでしょうか。
また、「少しお尋ねしたいんですが」と言われたら、「はい、承ります」や「はい、おうかがいします」といった言葉を添えるだけで、あたかも2~3歩前に出て相手を迎えているような印象になりますよね。
プラスの一言を磨こう
営業向けの研修でこうした演習を行うと、参加者からは「最後に『お電話ありがとうございました』に『また、ご連絡お待ちしております』と加えたらもっと印象が良くなるかも」「さらに、『〇〇様』と名前を添えるだけで、特別感が生まれるね」といったアイデアが次々と出てきます。
「出迎え3歩、見送り7歩」の基本姿勢は、顧客対応の現場だけに留まるものではありません。
あなたの仕事でも、きっと実践できる場面があるはずです。
小さなことから取り組むだけで、あなたの感じのよさは気づかないうちに上がっていきます。
そして、信頼を得られる場面が増えるはずです。今日から一つずつ、始めてみてくださいね。
(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。