上田 この春はまさに値上げラッシュです。先日、内閣府の行なった世論調査でも、「悪い方向に向かっていると思われる分野」で、「物価」は「景気」に続いて2位でした。この値上げラッシュの口火を切ったのは、原油価格です。一説には、1バレル130ドルくらいまで行くんじゃないかという話も聞きますが、すべてこの原油価格の上昇が、物価上昇の原因と言ってもいいんでしょうか。
竹中 間違いなく非常に大きな原因です。私がよく使う言葉で「経済のない一日はない」というのがあります。私が朝食べたパンもバターも、ここに来るときに乗った車のガソリンも、すべて輸入されている。全部が実は原油と関係しているんです。原材料コスト、製造する際の電力コスト、さらに輸送コストがかかる。原油の値段が上がることは、経済の一番根源的なインプットの部分に大きな影響を与え、物の値段を上げる力となります。
上田 小麦はもちろん不作もあったんでしょうが、バイオエタノールの原料であるトウモロコシのほうに生産が行っちゃったということもありますよね。
竹中 原油に頼らないで食物からエネルギー源を作ろうという、バイオエタノールの試み自体はいいけれども、そのためにトウモロコシの値段が上がるから、皆がトウモロコシを作る。その分、小麦が作られなくなり、小麦の値段が上がる。結局、原油価格の影響がいろんな形で出てきて、身の回りのものの値段が全て上がっている。
ただ、価格が下がっている物もあります。IT関連の製品はまだ下がり続けていて、消費者物価全体で見ると、1年前に比べてまだ1%くらいの上昇です。それでも今までデフレだった物の値段が上昇しているのは事実で、今後さらに波及していくことは当然予想されますから、物価の上昇に注意を払わないといけない状況になってきたことは間違いないですね。
新興国の経済発展で
原油の価格上昇圧力は続く
上田 そもそも、なぜ原油が一気に値上がりしたんですか。
竹中 これもいろいろな要因があります。今までの原油の値段が少し安すぎたという言い方もできますが、直接的な影響としては、中国に代表される新興国が経済発展をして、結果的に石油の消費量が一気に増えたことです。中国は5年くらい前から日本を上回る石油消費を行なっている。中国のGDPはまだ日本の半分くらいですが、エネルギー効率があまり良くないということもあり、石油の消費量がどんどん増えています。当然、中国のような大きな国が石油を買い占めようとすると値段が上がる。今後さらに増えるという予測も加わり、その思惑もあって、ますます石油が高くなる、というメカニズムが働きます。