ガソリンより20円安いのに…環境にもやさしい「夢の燃料」が販売禁止になった残念すぎるワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

ガソリン税の暫定税率を廃止する法案を一部野党が提出しました。他方、2024年のガソリンスタンドの倒産・休廃業は184件で、3年連続で増加し、補助金縮小で経営環境はさらに厳しくなるそうです(帝国データバンク調査)。何かと話題になるガソリンですが、そもそもクルマの燃料はガソリンだけではありません。2000年代初頭に大論争を巻き起こした「アルコール燃料」の是非を振り返ります。(モータージャーナリスト/安全運転インストラクター 諸星陽一)

ガソリンよりもリッター20円安い!
「ガイアックス」が注目されたワケ

 脱炭素社会の一つの方向性として今、再び注目されている「アルコール燃料」をご存じでしょうか。実は、日本では1999年に高濃度アルコール燃料が発売され、大きな注目を集めたことがあります。

 その商品名は、「ガイアックス」(GAIAX)。ガソリン1リットルが110円の当時、ガイアックスは90円程度とリーズナブルでした。高濃度アルコール燃料は、揮発油税や軽油引取税の対象外だったのです。ガソリンスタンドのようにポンプで給油する方式で販売されていました。

 ガイアックスは、天然ガスを原料として精製されていました。成分の詳細は、01年時の環境省の調査結果によると炭化水素分成分が48.4%、残りがアルコール成分(インプタール、イソプロパノール、メタノール、MTBE)でした。なお、ガソリンは100%が炭化水素分です。

 調査では実車による排ガス測定も行われ、これによると一酸化炭素と炭化水素の排出量はガイアックス使用時の方が少なく、窒素酸化物はガイアックス使用時の方が多い傾向が確認されています。二酸化炭素、燃料消費率とも、ガソリン使用時とガイアックス使用時では、それほど違いなし。アルデヒド類の排出量は、ガイアックス使用時がガソリン使用時に比べて多い傾向でした。

 一般的なガソリンエンジン車に使えて、一酸化炭素と炭化水素の排出量を大幅に減らし、安いのがウリだったガイアックス。しかし、メーカーや国、ユーザーを含めて大論争になった末に、03年に販売禁止になりました。

 ガイアックスを販売していたベンチャー企業のガイアエナジーは当時、「石油連盟から圧力を受けている」と訴えていました。ガイアックスがユーザーの支持を得れば、ガソリンの売り上げが下がる可能性は十分考えられます。