【第62回】 2010年03月13日
総需要の減少をもたらした2つの要因
──今こそ必要なデフレの経済学(5)
「デフレの原因は有効需要の減退」と考えられることが多い。
原理的に言えば、そうしたことが起こる可能性は、これまで述べてきた総需要・総供給の枠組みにおいて、否定はできない。【図表1】に示すように、何らかの原因で総需要曲線がDからD'へと下方にシフトすれば、均衡点はEからE'に移動し、物価下落と産出量の縮小が生じる。

ただし、いくつかのことに注意が必要だ。これについて、以下に述べよう。
第1は、需要減退が日本の対外経済との関係で引き起こされた点に関連することである。
減退した需要として、まず個人消費支出と設備投資があげられる。個人消費が減退した理由は、所得の減少だ。それは、これまでも述べてきたように、中国製品との競争の結果、日本の賃金が引き下げられたためだ。また、設備投資が減ったのも、中国製品との競争の結果、日本製品が国内・国際市場で販売量を落としたからだ。つまり、いずれも、中国の工業化が大きな原因となって生じたことである。
そして、こうしたことになってしまったのは、日本が産業構造を改革できず、中国からの安い輸入と競合することになってしまったからだ。
これまで述べてきたように、中国工業化は、総供給曲線を下方にシフトさせることによって、デフレの大きな原因となってきた。それに加えて、上記のような影響が働いた。結局、中国工業化は、総供給、総需要の両面において、日本経済に大きな影響を与えたことになる。
ところで、ここで注意すべきなのは、経済全体を考える場合には、【図表1】に示した総需要曲線のシフトだけでなく、総供給曲線が下方にシフトしたことの影響も考えなければならないことだ。
これは、【図表2】に示されている。そして、もし【図表2】のように総供給曲線のシフトが十分に大きければ、産出量を増大させる効果を持ったはずである。これは、望ましい効果として評価されたはずだ。
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著者プロフィール
- 野口悠紀雄
(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『「超」整理法』シリーズ、『資本開国論』『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』等がある。 野口悠紀雄ホームページ
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