衆議院が解散した。

 総選挙を前にして、与野党が自らの経済対策、景気対策を自賛する一方、双方が相手のそれを「バラマキ政策」だと批判している。

 「バラマキ」という批判の意味は、投資対効果が薄い分野であるにもかかわらず、貴重な税金を注ぎ込んでいるということであろう。つまり、財政資金の使い道としてははなはだ非効率だ、という指摘だ。その通りである。今や波及効果が極めて小さくなった公共事業など、与野党双方の政策に事例は山ほどある。お金持ちにまでまんべんなく配られた定額給付金などは、その典型であろう。

 では、効果が薄い、あるいは疑わしい分野に、政治家はなぜ税金をつぎ込んでしまうのだろうか。第一に、自分の利権、既得権保護を最優先し、予算の全体最適など考慮の外である政治家が多いためだろうことは、中学生でも容易に想像できる。

 それだけではあるまい。第二には、政府総体として――むろん、野党も――効率的な投入方法を知らないから、またはそのためのシステムを持っていないから、なのではないだろうか。

 投資対効果の高い分野、あるいは人々にピンポイントで集中配分できれば、その経済対策の効率性は飛躍的に向上する、これまた中学生でも理解できよう。だが、それらの分野、人々を特定できないからこそ、やむなく全体にバラマクことで、その特定できない効率の高い分野、人々に行渡らせようとしているのではないだろうか。

 例えば、所得格差が広がり、社会的弱者が増加している。彼らに対する経済的支援が必要だと、多くの政治家が叫んでいる。その通りだとしよう。では、社会的弱者とは、誰か。何人いるのか――。