「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では著者である萩原礼紀氏のインタビュー記事をお届けします。

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「高齢の親といつもケンカになってしまう人」が見落としている1つの視点

――今回の書籍は「高齢の親との話し方」がテーマになっていますが、萩原さんのもとには、こういった悩みがよく寄せられるのでしょうか。

萩原礼紀氏(以下、萩原):そうですね。私は普段、リハビリの仕事をしているのですが、そこで高齢者である利用者本人やご家族と話していると「家族と話すといつもケンカになり、困っている」という相談を頻繁に受けます。

 子どもとしては、親の健康を思って「散歩したら?」と提案しただけなのに、「家から追い出すな!」と言われてしまってケンカになったり、逆に、親が子どもに対して「そんなに仕事ばかりして大丈夫なの?」と心配しただけなのに、「放っておいてよ」とケンカになったり、その種類はまちまちです。

――たしかに、どちらも聞いたことがあるやりとりです。

萩原:そうですよね。そういった相談が多かったため、親子課題の根幹にあるのは実は「コミュニケーション」なのではないかと考えて、今回の書籍を執筆しました。

 コミュニケーションがなぜ大事かというと、コミュニケーションがうまく取れないと、親の命や健康を守ることができないからです。たとえば、高齢者の免許返納問題。少しずつ衰えていく親を見ていると、いつまでも車を運転させるのは怖いと誰もが思うと思います。

 そんなとき、ストレートに「そろそろ免許返納したら?」と言ったらどうなるでしょうか。親としてはいい気持ちはしないですよね。本人にとっては大事な生活の足ですし、自分のことは自分が一番わかっているつもりですから、余計なお世話と受け取られてしまいます。ですが、子どもの意見としても、単純に親を心配しての声かけなので悪気はありません。

 こうしたコミュニケーションが原因で親子のすれ違いが発生するのです。