また、企業再生会社リヴァンプでの経験から、商売には波があり、気合と根性だけでやっていくのは難しいと学んだ。現状を理解したうえで、それを否定し、組み直すという戦略が重要なのである。

 現在、彼が率いるローソンは二番手だ。しかし、コンビニの基本動作としてのオペレーションをしっかりやることを前提に、差別化につながる施策をスピーディーに進めることで、色々な戦い方ができると考えている。

◇二人の強烈な経営者との出会い

 玉塚氏は、日本を代表すると言っても過言でない強烈な経営者二人から大きな影響を受けてきた。一人は、ファーストリテイリングの柳井氏である。彼は生粋の商売人で、稀代のアントレプレナーだ。一方、玉塚氏をローソンへ呼び寄せた新浪氏は、マクロの視点もディテールへのこだわりも持ち、大きな絵からブレークダウンして今やるべきことをやる人である。

 全く違う個性を持つ経営者と至近距離で働けたことに、玉塚氏は感謝しているという。彼らは玉塚氏にとって「逃げてはいけない分厚い壁」であり、それこそが玉塚氏の大好物なのだ。彼は、正しいと思ったことをやり切るという信念を貫き、今日も壁へと立ち向かっている。

■「要するにこういうこと」が好き(篠田 真貴子)
◇世間の良し悪しに翻弄された正統派CFO時代

「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」でお馴染みの糸井重里事務所にてCFO(最高財務責任者)を務める篠田氏は、これまでゴリゴリの正統派CFOキャリア一直線だった。バブル末期、彼女が日本長期信用銀行に入行したのは、みんなが「良し」とする選択肢だったからだ。配属先で待っていたのは山のような事務作業。ゴム印をまっすぐ押すのもままならないほど不器用な篠田氏は「この仕事に向いていない」と気づき、海外のビジネススクールへ留学する。しかし、卒業生に人気な投資銀行業務に興味が持てず、進路に迷い、最終的にはインターンを機にマッキンゼーへ入社することとなった。

 篠田氏が好きなのは、クライアントの様々な課題を「要するにこういうこと」と抽象化して、解決策を提案し、クライアントから反響を得ることである。マッキンゼーの仕事はそんな彼女にとって楽しいものだった。

 しかし、多忙なコンサルタント生活に、彼女はいつしか葛藤を抱き始めた。大量のデータ分析という兵隊感あふれる激務も、その後約束されるであろう「シャンパン付きの昼メシ」にも、全く燃えなかったのだ。そのため、昇格にもコミットできず、挙句には会社から「ここにいても時間の無駄じゃない?」と言われてしまう。社会的な良し悪しの「良し」を全て試しても、自分の道が見つからないという焦りとともに、彼女は退社を決めた。