『好きなようにしてください』の読者3名が、著者の楠木建氏と語り合う座談会。20代編、マネジャー編に続きお送りするのは人事部門編です。一人ひとりの好き嫌いを活かす方が、組織はよくなると考える楠木氏に対して、人事部門で働く3人はどう答えるのか。(撮影・鈴木愛子、構成・肱岡彩)
自分のキャリアは自分で決めるしかない
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。専攻は競争戦略。 著書に『ストーリーとしての競争戦略』『「好き嫌い」と経営』『「好き嫌い」と才能』(すべて東洋経済新報社)、 『戦略読書日記』(プレジデント社)、「経営センスの論理」(新潮新書)などがある。
楠木 この本のメッセージは「好きなようにしてください」ということなんです。この言葉は一見すると、「あなたの個性を輝かせて」や「ワークライフバランス」のような福利厚生の話に一見聞こえるのですが、実際は、わりとシビアな主張をしています。
結局、仕事は成果がすべて。なんで成果が出るのかというと、よっぽど上手だからで。なんでそれほど上手なのかと言うと、あっさりいえば、継続的に長い間努力投入してきたからで。じゃあ、なんでそんなに努力できたのかというと、ようするに「好きだから」。そういうロジックで考えています。
以上の話を逆転して短縮すると、「好きこそものの上手なれ」という古来の格言になるわけです。そんなこんなで、仕事の根本のところには好き嫌いがある。そういう意味を込めて「好きなようにしてください」というタイトルそのままのメッセージが込められています。
僕は基本的に全部、「好きなようにしてください」でいくのが、一番成果が出ると思っているんですよ。ただし、人事の立場からみると、必ずしも全部が全部「好きなようにしてください」というわけにはいかないと感じるところもあると思います。人事の仕事をなさっている皆さんに、感想やご意見をいただきたいと思います。
サイバーエージェント勤務。2002年に入社後、広告営業や子会社人事などを経て、現在は人事部門にてキャリア採用を担当。人事歴は5年目になる。
佐藤 僕は結構、社員から相談を受けるんです。内容は、キャリアに迷っていますとか、いまの上司との関係に悩んでいますとか、次はこういったことに挑戦したいなど、いろいろな種類があります。ですが、基本的に僕は、自分で決めてほしいなと思っているんです。
いろいろなアドバイスや参考意見は言うのですが、「最後は、ご自分で決めてくださいね」と。そしてその決めたことを最大限サポートしますというスタンスでやっています。この本を読んだ時に、ああ、やっぱりこれ、楠木さんも最後は、「自分で決めなさい」って言っているのかなと思ったんです。そういう意味では、すごく共感できましたね。
楠木 人間にとっていい状態とか、極論をすれば幸せなんていうのは、十人十色、100人いたら、100個分あります。まったく個別のもので、何が最適なのかっていうのは、本人しか、そもそも決められない問題のはずですね。