今こそ、「キューバ式の都市型農業」に学べ
そして大切なのが、野菜の食べ方です。
もともとキューバでは、野菜より肉食だったのですが、アジア系の移民が野菜のおいしい食べ方を広げていきました。
そんなこれまでになった「キューバ式の都市型農業」は世界から注目されました。
つまり、有機農業者のあこがれの国ともなったのです。
そんなキューバの話を聞いて、石油エネルギーに頼った農業、そして当時のキューバとほぼ同じ食糧自給率の日本が、もしそのような事態に陥った場合、日本ではどうなるだろうと考えました。
四季もあり土も豊かで水も豊富な日本では、キューバのようにみんなが有機農業をすれば大丈夫かもしれません。
全国的に「地域力」が問われる時代
しかし、今の日本の過当競争社会では難しいのではないかとも思いました。
キューバが未曾有の危機を乗り越えられたのは、有機農業の技術があっただけではなく、強いリーダーシップをもったカストロがいたということ、そして社会主義体制もあったと思いますが、地域のコミュニティがしっかりとしていたからでしょう。
どんなに農業技術があっても、いざというとき、奪い合いになっては意味がありません。
そんなことから、地域力を上げることが何より大切なのではないかと思うようになり、地域力を高めていこうと思いました。
そんなことから風来では、栽培、加工、直売の3本柱に加え、「知恵」の教室を第4の柱にしました。
「畑の菜園教室」や「味噌教室」など、昔ながらの加工品の教室を通して、互いのコミュニティを深めています。
同時に、教室にきてくれる生徒さんは、そのまま風来のファンにもなってくれるという相乗効果も出ています。
地域に根ざすには時間がかかります。
そこで最初は、インターネットを使い、全国に販売して、少しずつ地域に戻ってくる戦略を考えました。
自分では、「外堀を埋める」と表現しているのですが、外から評価が高まると地域の人の見る目も変わってきます。
これからは真の地域力を上げることが全国的に求められる時代になるでしょう。
【参考文献】
吉田太郎著『200万都市が有機野菜で自給できるわけ――都市農業大国キューバ・リポート』(築地書館、2002年8月刊)
菜園生活「風来」(ふうらい)代表。1969年、石川県生まれ。大学卒業後、バーテンダーとなる。1994年、オーストラリアへ1年間遊学後、ビジネスホテルチェーンの支配人業を3年間勤務。その後帰郷し、1999年、知識ゼロから起農。
小さなビニールハウス4棟、通常の10分の1以下の耕地面積である30アールの「日本一小さい専業農家」となる。
3万円で購入した農機具などで、50品種以上の野菜を育て、野菜セットや漬物などを直売。SNSなどでお客さんとダイレクトにつながり、生産・加工・販売を夫婦2人でやりながら、3人の子どもたちと暮らす。
借金なし、補助金なし、農薬なし、肥料なし、ロスなし、大農地なし、高額機械なし、宣伝費なしなど、“ないないづくし”の戦略で、年間売上1200万円、所得(利益)600万円を達成。
基準金額95%未満でも105%超でも反省する「売上基準金額経営」を実践。
小さいからこそ幸せになれるミニマム主義を提唱。地域とお客さんとのふれあいを大切に、身の丈サイズで家族みんなが明るく幸せになる農業を行う。
著書に『小さい農業で稼ぐコツ――加工・直売・幸せ家族農業で30a1200万円』(農山漁村文化協会)がある。最近は、多くの新規就農者の相談に乗りながら、全国各地からの講演依頼も多い。
【風来HP】http://www.fuurai.jp/