「バイクは危ない」に挑んだ
ヤマハ発動機

 バイクは危ない、とよく言われる。家族の反対で購入を取りやめた方もおられるだろう。それにはいわゆる「三ない運動」の影響が大きく、1982年から最近まで全国高等学校PTA連合会が掲げてきた指針によって、ネガティブイメージが幅広い世代に定着したことが背景にある。

「危なくないバイク」を目指した技術開発が進んでいる(写真はヤマハ発動機の「トリシティ155」)

 だが、それを言うなら、近ごろ流行のロードバイク(自転車の一種)はどうなのだろう?四輪車に混じって車道を走るという利用実態は、オートバイと同様である。さらに都市部では、子育てママが自転車の前後に子どもをのせて3人乗りで走る姿もひんぱんに見かける。どちらも交通事故にまつわる危険性は大きいのに、だからやめろという声は聞こえてこない。

 自転車は、四輪車にはない便利さがあるから選ばれている。そしてバイクは、両者の中間的な性質をもつ乗り物だ。四輪車ほどの積載力はないが、ひとりでの外出シーンでは四輪車より機動力が高く、駐車も容易で、車庫証明の必要もない。

 郊外世帯が夫婦ともに所有する四輪車の片方をオートバイに置き換えることで、あるいは都市部の単身者が諦めていたクルマの代わりに購入することで、手に入る自由さがあるはずだ。だが、その前に立ちはだかるのが、前述のネガティブイメージだ。

 ヤマハ発動機がその壁に挑むために選んだのが、“三輪”というスタイルだった。2014年の「トリシティ125」発売から2年を経て、この9月にはより大排気量の「トリシティ155」が欧州で先行発売される予定だ。それを機に「めざせ、ころばないバイク」という標語を打ち出し、非バイク保有者へのアピールを強めようとしているのだ。ヤマハ発動機本社を取材し、開発責任者から話を聞いた。