エレクトロニクスは韓国メーカーの後塵を拝し、自動車も韓国や中国メーカーの追い上げが激しくなっている。そうした中でも、依然として世界のトップ水準を維持しているのが、日本の省エネ技術である。

地球環境を考えると、CO2に代表される温暖化ガスの削減は待ったなしだ。省エネというと、燃費の良い車や家電製品を思い浮かべるが、案外、素材産業の省エネ技術の高さは、正確には知られていない。

国内市場が成熟し、新興国でも価格競争が激しくなる今、日本が生きていくには技術しかない。加えて環境規制をかける場合には、一律ではなく、技術的に省エネ余地の大きい分野に厳しい規制をかける方が、高い効果を見込める。この二つの視点も踏まえて、消費財、生産財取り混ぜて、日本の省エネ技術を再発見する。(ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

セメントの生産工程は
「料理に似ている」

 第1回は、セメントを取り上げる。セメントは古くからある建設材料で、ごく身近にあるからだれもが知っているのに、どうやって作られているのか、意外と知らない。実は、日本セメント産業のエネルギー効率は、世界トップを走っている。

 セメントの生産プロセスは「料理に似ている」というのは、太平洋セメントの山本泰史生産プロセスグループ・グループリーダー。原材料を調合し、砕いて焼いて、再び調合して砕く。化学的には、石灰石から二酸化炭素をはずす過程でもある。

だれも知らないセメント業界の凄さ<br />エネルギー効率は世界で断然トップを走る材料が真っ赤な溶岩状になったキルン内部(写真提供:太平洋セメント)

 セメントの原料は、石灰石、粘土、けい石、鉄原料の4つ。この4種類の原料を調合して、原料ミル(ローラーミル)で砕く。砕かれた原料は予熱装置(SP)に投入されて、ゆっくりと温められ、続いて円筒形のロータリーキルン(焼成装置)の中で1450℃で焼成されると、真っ赤な溶岩のようになる。