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平成の時代、「牛丼と言えば、吉野家」と言う人が多かっただろう。しかし今や時代は変わり、圧倒的に「すき家」が店舗数を増やし、覇権を握っている。さらに、すき家はこの物価高の今年9月に牛丼並盛を30円値下げした。なぜ、吉野家と差をつけることができたのか。(イトモス研究所所長 小倉健一)
物価高なのに、すき家がまさかの値下げ!なぜできた?
街を歩けば、赤と黄色の看板が目に入る頻度が圧倒的に増えたことに気づくだろうか。
2025年、日本の食卓を支える「牛丼」という国民食の勢力図は、かつてないほど鮮明な形となっている。かつて業界の王者として君臨した吉野家に対し、後発であったすき家が、店舗数、売り上げ、そしてビジネスモデルの強靭さにおいて、完全に突き放す形となったからだ。
特に衝撃的だったのは、原材料費や人件費が高騰し、物価が上がり続けるインフレの時代に、すき家が今年9月に敢行した「値下げ」である。
牛丼並盛を480円から450円にするという決断は、単に消費者の財布を助けるだけでなく、ライバルである吉野家との決定的な「基礎体力」の差をまざまざと見せつけることになった。
吉野家が品質やブランドを守るために価格を維持、あるいは値上げせざるを得ない一方で、すき家を運営するゼンショーホールディングス(以下、ゼンショー)は、値下げ攻勢に出てもなお利益を出せる強固な仕組みを完成させている。
これは単なる安売り競争の結果ではない。創業者が抱き続けた、ある「強烈な思想」が、数十年の時を経て結実した姿なのである。
ビジネスの世界では、規模の大きさはそのまま力の強さになる。ゼンショーは国内の外食企業として初めて売上高1兆円を超え、すき家だけでなく、回転寿司の「はま寿司」やファミリーレストラン「ココス」など多様な業態を束ねる巨大企業となった。
一方の吉野家は、依然として牛丼事業への依存度が高く、企業規模ではゼンショーの7分の1程度にとどまる。店舗数を見ても、国内ですき家は約2000店に迫る勢いだが、吉野家は約1300店ほどだ。シェアにして倍近いの開きがあるこの差は、もはや逆転不可能なレベルに達していると言っていい。
なぜ、これほどの差がついたのか。







