準決勝「対ドイツ戦」。「涙のエッジボール」の瞬間

――それにしても、ドイツ戦は衝撃的な敗北でした。2試合ずつをドイツと取り合い、最終の第5試合。フルセットまでもつれ、一時は福原愛選手が3-7と劣勢になりながら、6ポイント連取で9-7と逆転。しかし再度追いつかれ、最後は話題になったあの「エッジボール」で幕切れとなりました。ネット上でもしばらく、「あれは、入ってなかったんじゃないか?」とくすぶっていました。あの瞬間、村上監督はどういう心境でいらっしゃったんですか?

◆リオ五輪女子卓球団体戦「日本対ドイツ」第5試合最終ゲーム

村上 あの瞬間は相手選手の行動に気を取られていました。なにせ、エッジボールの瞬間に、ラケットを場外に放り投げて、喜びを表現していましたからね(笑)。ただあの後、何度もテレビでエッジボールの瞬間の映像を見ますと、僕、右手をボールの軌道とは逆に動かしていました。「こっちに来るな、アウトになれ!……あー、入ってしまったか」という心境だったんでしょうね。

――監督はあの瞬間、「サイドボール」ではなく「エッジボール」だとわかっていたんですか?

村上 はい。卓球台のサイドに当たれば、ボールは下に落ちます。しかし、あのときボールははっきりと横上に跳ねた。これは、エッジボール。つまり、相手のボールは「入った」のです。

 今回僕は、審判よりも見やすい位置で最後のボールを見ていました。その僕が「ああエッジだ。まいった」と思った。もしも「サイド」だと思ったら、すぐに腰が浮くと思います。「おーい、ちょっと待ってくれ!」と審判に抗議するために、条件反射で立ち上がるはずです。ところがそうはならなかった。それは、「エッジボール」だと、わかっていたからなんですよ。

――すると、なぜ抗議したんですか?

村上 いやぁ、石川(佳純選手)がね、あの試合、福原を応援した声が「アドバイスを送った」と審判に誤解されてベンチ外に退場になっていたのですが、その石川が遠くから走ってきて言うんですよ、「監督、今のアウトです! 絶対アウトです! 抗議しましょう!」と、ものすごい剣幕で(笑)。

――そうだったんですね(笑)。それで、やむをえず?

 まぁ、そうですかね。団体戦では、審判への抗議は監督しかできませんからね。抗議せずにいたら石川が収まらない。だから「わかった、ちょっと行ってくるわ」と(笑)。

 でもよく考えたら、石川はあのボール見えてないですからね。退場して、ベンチから離れた暗いところで見ていたわけです、あのボールを。僕は石川よりも見やすい位置であのボールを見て、「入った」と思った。でもその後、石川が必死に走ってきて「アウトだ」と言う。この場合、選手の声を審判に伝えるのも監督の役目です。だから、抗議にいきました。