(上)大統領選ディベートの後に、LA在住のヒラリー支持者とトランプ支持者が激論した (下)「ヒラリーに票を投じるのは決めているけど、トランプの発言を監視するためディベートを観に来た」という画家のリンジー・ノーベル

 日本や韓国の安全を守るために、米国が巨大な軍事費を強いられ、負担が多過ぎるとトランプが発言すると、聴衆の1人、画家のリンジー・ノーベルはこうつぶやいた。

「日本はここ数十年、ずっと米国の同盟国でしょ。建物に自分の名前の金ロゴをつけることに精を出してきたトランプが、一体、国際同盟の何を知ってるって言うわけ?あの男が大統領選になったら、核戦争でも起こすんじゃないかと怖い」

 国際政治交渉の現場で揉まれてきた経験があるぶん、ヒラリーのほうがマシなグローバル感覚を持っているはずだ、とノーベルは言う。ニューヨークに14年間住み、ワールドトレードセンターが崩壊するのを目撃した彼女にとっては、経済や税金問題よりも、核戦争が起きないことのほうが最重要課題だという。そのための国際同盟には、投資してしかるべきだという考えだ。

「それに、昔私がつきあっていたボーイフレンドは、バリバリの共和党員で不動産業界にいて、トランプとビジネスをしていたけど、彼ですらトランプを毛嫌いしていたもの」

同じディベートを見ていても
感じ方は人によって全く異なる

マリッッジ・カウンセラーのエステル・スナイダーいわく「トランプの方が民衆に語りかける口調で、ヒラリーは終始上から目線の発言だった」

 一方、臨床心理士であり「トランプを応援するラティーノたち」というグループを主催するメキシコ系アメリカ人のエステラ・スナイダーの感じ方は、同じディベートを同じ劇場で見ていても、全く違っていた。彼女はこう言う。

「イスラム教過激派によるテロがこれだけ起きているのに、ポリティカルコレクトネスにこだわり、『イスラム教過激派』という言葉を使うのを恐れて、彼らの責任を追及しないヒラリーをリーダーとは呼べない。トランプは、どんなにバッシングされようと、誰がテロを起こしたかという問題点を指摘し、徹底追及できる点でリーダーにふさわしい」

ビバリーヒルズ在住のトランプ支持者、ロニー・ライト

 また、トランプ本人や彼の家族と個人的に付き合いがあるという、ビバリーヒルズ在住の投資家ロニー・ライトは、「トランプの支持層は怒れる白人男性ブルーカラー層で、収入や教育程度が低い、NYタイムズ紙を読まない人たちだ」といった、メディアがこぞって描きたがる画一的なストーリーにはもう飽き飽きだという。

「私は黒人で、科学分野の発明によって富を築き、本を執筆し、スタートアップ企業に投資してきた。トランプはここ数週間、米国の最も貧しい地域を回って、貧困に苦しむ人々と直接話をしている。黒人票を得るためのパフォーマンスだと批判されたけど、ミセス・クリントンはその間、黒人が大多数を占める貧困地域に足を踏み入れてすらいない」

 民主党が強いLAの貧困地帯でカートを押しているホームレスの人々が、ヒラリーの「H」ステッカーをカートに貼っているのを見ると、涙が出そうになるとライトは語る。

「もし本当にミセス・クリントンが彼らの幸福を第一に考えてきた政治家なら、なぜあの人たちは今もホームレスなのか。彼らを騙し続けてどうしようというのか」

 一方、クリントン支持者の1人、スー・クラムは、LAの貧困地域の学校で教師のアシスタントのボランティアをしていた経験からこう言った。

「億万長者のトランプと違い、ロースクールを卒業してすぐ子どもたちを助ける仕事に就いたヒラリーなら、十分な教科書も教材もないLAの子どもたちのひどい現状を変えるために、具体的な政策を示せると思う」