叱るための基本的な心得

 これまでは、「叱る」と「怒る」ことの違いについて、理解を深めてきました。しかし、職場などで実際に部下を叱る場面になったとき、どのような言葉を使ったり、どのような態度をとったらよいか、すぐには思いつかないものです。

 ここでは、いくつかの例をあげながら、「叱る」ということの基本的な心得、考え方について説明します。一人ひとりの置かれた環境によって、接し方は異なりますので、自分なりの方法にアレンジしながら活用してください。

心得1 相手を責めない

 部下がミスをしたとき、つい現状を批判したり、相手を責めてしまいがちです。もちろん、ミスをしたことに気づいていない相手に対して、ミスを指摘するのは大切ですが、責めても相手の行動の改善にはつながりません。むしろ、責めることで相手の心をかたくなにしてしまい、逆効果になる場合が少なくありません。

 また、上司自身もミスをする場合もあるでしょうから、責められている側からすれば、「あなただってミスしたじゃないですか」「遅刻したじゃないですか」「このあいだ、トラブルがあったじゃないですか」と、反発心を生んでしまうこともあります。

 人間であれば、誰でもミスはするものです。どうしてミスばかりするのかと批判をするよりも、誰でもミスはあるものだということを前提にして、相手に対する希望や期待を伝えるほうが、より前向きに問題解決に取り組むことができるでしょう。実際、相手の受け止め方や姿勢も変わってくるはずです。