日銀のイールドカーブ・コントロール
本当の狙いは?

 日銀の黒田総裁の任期は2018年4月。あと残り1年半を残して、総括的な検証を行った。筆者は、そこでイールドカーブ・コントロールを打ち出した本当の狙いは、国の利払費を先々まで最小限に抑えることではないかと考えている。

 建前は、長期、超長期の金利まで下がると金融機関の体力を奪うから、長期金利を0%にする目標(金利ターゲット)を設けて、超長期金利のプラス金利を保証すると読める。しかし実際は、プラス金利の超長期国債を金融機関が一斉に買いに来るからプラス金利であっても、金利水準はかなり低くなるだろう。

 2016年度の20・30・40年債の市中消化額は、25.8兆円。その金利が平均0.5%だとすると、年間利払費は1290億円と計算できる。この利払費は、民間金融機関の金利収入でもあるから、今後も金融機関の体力が奪われる状況は本質的に変わらない。

 2020年度の利払費は、今後の金利水準を短期・中長期をゼロ、超長期金利が現状並みと仮定すると、現在の約10兆円(2016年度予算ベース)から、5.7兆円まで減少する可能性がある。

 黒田総裁にすれば、自分の退任後、長期、超長期金利まで低位に抑えることができて、政府の財政再建に大きなメリットを残すことができる。これが、後々、「黒田総裁の遺産」と言われることだろう。

大きく変わってくる
2020年度以降の財政再建

 将来の金利コストが累積的に軽減されるとすれば、2020年度以降の財政再建のイメージも大きく変わってくる。

 従来は、2019年10月に消費税率が予定通りに10%に引き上げることができて、ようやく基礎的財政収支(国・地方のプライマリーバランス)の赤字縮小に何とか目処がつくことが皆の念頭にあった。

あと少しで黒字化できるから、次は増えていく税収で、利払費を賄えばよい。具体的に、利払費に対応する国債発行が数年後に10兆円以上と漸次増えていくとみられてきた。

 少し丁寧に説明すると、プライマリーバランスの黒字化は、政府債務の元本返済の増加ペースをゼロにして、国債発行額を金利分の借り換えに限定するという意味合いである。