要約者レビュー
春原 剛著
240ページ
新潮社
760円(税別)
2016年11月の大統領選挙にて、米国初の女性大統領候補となったヒラリー・クリントン。トランプとの一騎打ちに、世界中が注目を寄せている。2008年に舐めた苦杯を胸に、ヒラリーは何をめざすのか。側近や閣僚候補はどんな人たちなのか。「親中・反日」になるとの憶測は本当なのか。本書『ヒラリー・クリントン』では、ヒラリーへの単独インタビューを行った経験を持ち、日米の外交・安保の関係筋にも精通している著者が、ヒラリーの半生を振り返りながら、「ヒラリー政権」の未来図を鮮やかに描き出していく。
ファーストレディの時代には、目立ち過ぎてひんしゅくを買い、夫の不倫問題では「耐える妻」という印象を与えたヒラリーだった。しかしその後、上院議員から国務長官、そして大統領候補へと、波乱万丈ながらも一気にスターダムを駆け上がってきた。彼女が大統領になれば、歴史上、世界で最も権力を持った女性となるといえよう。ところがヒラリーは、こうした華々しいキャリアを積んできた割には、大統領候補としての好感度は、本書が書かれた時点では、さほど高くはない。その理由は何なのか。ヒラリーが大統領になった場合、どんな陣を敷くのか、とりわけアジアではどのような外交政策を展開するのか。そして、日本との関係はどうなるのだろうか。こうした数々の論点に対する、緻密な取材に下支えされた、著者の鋭い分析には舌を巻くことだろう。日本人が知るべき内容を盛り込んだ「決定版」と呼べる本書は、今後の日本の政治、経済を見通すうえでも重要な示唆を与えてくれる一冊だ。 (松尾 美里)
著者情報
春原 剛(すのはら つよし)
1961(昭和36)年東京都生まれ。上智大学卒業後、日本経済新聞社入社。ワシントン支局勤務などを経て編集局長付編集委員。上智大学グローバル教育センター客員教授、日本経済研究センター・日米プロジェクト(富士山会合)事務総長。著書に『暗闘 尖閣国有化』など。