「中国メディアは、アメリカに進出した私たちのことを高く評価してくれているが、私は全然嬉しくは思っていない。むしろ、プレッシャーを感じている。世界では、私たちはまだ弱小なので、私たち1社では、とても中国企業という旗を掲げられない」

 さらに、次のようにしみじみと日本企業の存在を語った。

「日本企業を見てください。私たちは日本企業という言葉を口にしたとき、松下電器(現パナソニック)、ソニー、東芝、日立など多くの企業の社名が浮かび上がる。たとえて言うなら、日本企業というのは、多くの星からなる銀河なのだ。その中のどの星も、他人がまねできない輝きを放っている。しかし、世界に出た私たちは、孤独だ。ハイアール1社だけでの海外進出は栄光ではなく、孤独そのものだ。いつか、中国企業も日本企業に負けない銀河のような存在になって、その中に、自分なりの輝きを放つ星のひとつとして、私たちハイアールが存在するというような日を迎えることができたら、私は手放しで笑う」

 寂しそうな笑みを浮かべながら、とつとつと語る張氏の横顔と表情が私の脳裏に焼き付いた。

海外への進出は
法令遵守の意識を忘れるな

 しかし、いまは中国企業がそのハイアールの後を追うかのように、猛烈に海外に進出している。今年前半の中国の製造業の対外直接投資は前年同期比で63%増え、51億ドル(約6300億円)だった。中国の対米投資額も大幅に増加している。ニューヨークのRhodium Group が実施した調査によると、2015年前半、中国は64億ドル(約7900億円)をアメリカ国内で88の直接投資に振り向けた。

 日本に暮らす私のところにも連日、中国企業が投資の機会を探しに来ている。1日に3組の中国視察団の訪問を受け入れる日もある。

 ハイアールの張瑞敏氏が待ち望んでいた中国企業の銀河が次第に姿を見せ始めた。しかし、気になる問題点も出てきた。資金力にものを言わせようとして行動する中国の企業経営者が多い。地元の事情などを勉強しようという意識をあまり持たずに、賄賂などの方法で目的達成の近道を探そうとしている人がいる。