Photo:代表撮影/REUTERS/AFLO
7月1日にバングラデシュの首都ダッカの飲食店を襲撃したテロは、中国をも震撼させた。バングラデシュは、中国がアジアと欧州をつなごうとして推し進める「一帯一路」構想の重要な戦略拠点でもあるからだ。
奇しくも1週間前の6月25日、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)は年次総会を開き、第1号案件としてバングラデシュに単独融資を決めた。テロ事件はその矢先だったのである。
その第1号案件で白羽の矢が立ったバングラデシュでは、深刻な電力不足を解消するための送電線整備が行われることになった。
第1号案件がなぜバングラデシュだったのかをめぐっては、さまざまな憶測を呼んだ。
中国とバングラデシュは1975年に国交を樹立し、経済交流はすでに2000年代から緊密化している。2003年には中国が最大の投資国になり、2006年には隣国インドを超え、中国がバングラデシュにとっての最大の輸入国となった。
近年はバングラデシュ、中国、インド、ミャンマー間で道路、鉄道などを敷設し互いに経済的連携を強めようという「BCIM経済回廊構想」が動き始めた。また2013年以降は「21世紀海上のシルクロード」の重要な拠点として、バングラデシュをクローズアップするようになった。
バングラデシュに深く食い込む中国
ベンガル湾に面し、それと交わるアンダマン海の先にマラッカ海峡を望むというバングラデシュは、中国にとって地理的に「エネルギー輸送の要衝」でもある。マラッカ海峡が米国により封鎖されることを恐れ、中国は「真珠の首飾り」と呼ばれる海上交通路戦略、今でいう「21世紀海上のシルクロード」の布石を着々と打っているのだ。
その一方で、バングラデシュに対しては米国や日本も影響力を強めようとしている。「アジア太平洋地域へのリバランス政策」を進展させようと、2012年にはヒラリー・クリントン前国務長官が同国を訪問した。日本もまた安倍政権が2014年9月に6000億円のODA支援でその存在感を誇示した。