マナー違反や迷惑行為
電車内での嫌な思い出は?

東急電鉄のマナー広告がきっかけで論争が起きた「女子が電車内で化粧をするのはみっともない」問題。実際にそう思っている人は、どれくらいいるのだろうか

 電車のマナーというと、半年ほど前のことを思い出す。私はJRの四ツ谷駅(アニメ映画『君の名は。』の舞台の1つ。どうでもいい情報だが)から終電に乗り込んだ。

 車内はぎゅうぎゅう詰め。新宿駅で少し乗客が降り、ロングシートの目の前の席が空いたので座った。他社路線の接続待ちで電車がしばらく止まっているうちに眠ってしまった私だが、車両が揺れた拍子にふと目を開けて、ぎょっとした。目の前に腹があったからだ。目の前って、ほんとに目の前。眼前15センチくらいで腹が揺れている。

 何が起こっているのかわからないまま顔を上げてみると、吊革につかまった男性とおぼしき乗客が、プロレスの逆エビ固めをかけられているかのごとく、私に向かって腹を突き出している。なるほど、そういうことか。いや、納得しかけたが、おかしい。目の前に腹がある理由はわかったが、なぜこの人は1人で逆エビ固め状態に陥っているのか、それがわからない。

 見上げてみても男性の表情はうかがうことができず、「席を譲ってくれよ」とプレッシャーをかけられているのかなと考え、「座りますか」と尋ねてみた。男性がこちらを見る。見下ろしているその顔は40代後半といった感じ。うっとうしそうに首を横に振る。逆エビ状態で立ったまま、その男性の目は座っていた。

 どうもその男性は酩酊しているらしく、なんで吊革を掴んでいられるのか不思議になるくらい、体がぐにゃんぐにゃんに揺れている。新宿でまた大勢が乗り込んだせいで、行き場を失った男性の体は座っている私のほうにしか動けない。だから、私の目の前に腹がデーンと出っ張るのも道理ということか。

「こんなにへべれけになって電車に乗るなよ」と内心いらつきながら、「座りますか」ともう一度声をかけるが、先ほどと同じように拒否される。私も疲れていたので、座る気がないならもういいやと思ったのだが、しばらくして頭上からうめき声。見れば、男性、口をぱくぱくしている。あ。これ、あかんやつや。このままやと、ワイ、頭から吐物をかぶってまう――。緊迫感のあまり思考言語がエセ関西弁になる。と、次の瞬間……。