プライベート・エクイティ・ファンドとは何か

 産業金融の担い手と言えば、日本では、銀行と証券会社、そして一部リース会社やファクタリング会社などが思い浮かべられることが多いだろう。しかし、欧米に目を向けると、全く違った景色が見えてくる。

 特にプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、欧米では、銀行・証券と並ぶ産業金融の第3の柱として、新興企業の育成、企業の再生、産業再編などに積極的な役割を果たしている。日本が新金融立国を考える際には、既成概念や既得権益をいったん忘れ、既存の銀行・証券だけでなく、PEファンドにも積極的な役割を与えなければ効果は全く期待できないと言っても過言ではない。

 PEファンドとは、主として未公開の企業の株式を取得し、自ら経営に積極的に参画してその企業価値を向上させ、上場や産業再編といった出口に導く投資ファンドのことである。新興企業に投資するPEファンドをベンチャーキャピタル(VC)、成熟期の企業に投資するPEファンドをバイアウトファンドと呼ぶ。株式の取得は、通常は経営陣との合意による円満なものであり、いわゆるアクティビストファンドとは全く異なる。

 米国では第二次世界大戦後に2つのVCが誕生し、1970年代にかけて、戦後設立されたファミリー企業の株式の受け皿として発展を遂げた。1978年に米国労働省が年金基金に「プルーデントマン・ルール」を適用し、分散投資のために年金基金がPE投資をすることを認めたことをきっかけに、PEファンドは一気に産業金融の主役に躍り出ることになる。

 80年代には、カーライルやブラックスーンなど、今でも活躍する多くのビッグネームのPEファンドが設立され、89年には219億ドル(約2兆円)ものファンドが組成されたが、この10年間で約10倍の規模に拡大したことになる。

 ちなみに、その後20年間を経て2006年度には約2500億ドル(約21兆円)ものファンドが組成されている。この間、VCは2000年代前半のITバブルの崩壊を経験し、バイアウトファンドも07年に投資のピークを迎えた後、08年の世界金融危機で一時的に機能停止となったものの、最近は05年のレベルにまで戻ってきている。

 金融危機と相前後して、米国の巨大ファンドは資金調達を円滑化するために相次いで上場しているほか、上場株へのマイノリティ出資など、ヘッジファンド的な動きも活発になるなど、PEファンドは現在も進化を続けている。また、PEファンドへの投資家層も、年金基金に加えて、近年はSWFがその存在感を増しつつある。

 欧州でも、07年には約1200億ユーロ(約13兆円)ものファンドが組成されるまでに発展しており、金融危機後もその3分の1程度まで減ったとはいえ、2000年代前半のレベルを維持している。