生産車は主に米国、カナダで販売している。2017年3月期のスバル生産台数は、過去最高の33万6000台(対前年比42.3%増)を計画している。 Photo:SUBARU

富士重工業の快進撃は
「集中と選択」戦略にある 

 リーマンショック以降、苦境を乗り越えてきた日本の自動車メーカーは好調だ。特に「スバル」ブランドの富士重工業の躍進は目覚ましかった。それは、吉永泰之社長による経営戦略として実施した「集中と選択」だった。「米国一本足打法か」と揶揄されても米国での「スバル」ブランドに磨きをかけ続けた。結果、「売れ過ぎてタマが足りない」状況を生み出し、収益力抜群の北米を中心とする自動車事業を確立してきたのだ。

 富士重工業の業績において特筆すべきは、売上高営業利益率の高さである。10%以上の営業利益率をキープし、前期2016年3月期(2015年4月~2016年3月)は実に17.5%を示した。その最大要因は、米国におけるスバル車増販と台当たり利益の高さにある。日本車の中で本業の儲けを示す営業利益率が2ケタ台に乗せているのは、最も高い経営効率を確保しているといえよう。

 その富士重工業は今期2017年3月期(2016年4月~2017年3月)の連結純利益が2780億円(前期比36%減)になる見通しだと発表した。これは従来の予想を70億円下回る。営業利益は3730億円(同34%減)で270億円下方修正した。

 これにより、これまで快進撃を続けた富士重工業も円高で輸出採算が悪化し、業績面でかげりが出てきたという見方になった。

 しかし、これは同社が第2四半期の決算発表時に、この下期の想定為替レートを1ドル=100円、通期で1ドル=104円に設定したことによるものである。一方ではスバルの主要市場である米国の販売自体は好調で、連結販売台数について前回計画の104.97万台から今回計画の106.24万台に上方修正し、5年連続過去最高となる見込みだ。

 つまり、円高で輸出採算を悪化させたために減収減益予想としたものの、それでも営業利益率は11.7%をキープする。好調な米国販売を背景に米国生産拠点における生産能力を増強させ、生産倍増を図るスバルとしては、為替レートの影響は軽微にすぎず、営業利益率が高いために短期的には減益であっても、長期的には高い経営効率の維持が見込めるためだ。