米国経済の混乱につながった
レーガンの税制改革を想起

 一方で法人税を見てみよう。

 現行の35%から15%へというのは、極めてドラスティックな改革で、レーガンが1期目に行なった税制改革を想起させる。レーガン1期の税制改革は、税法が議会を通過するや否や、大幅な赤字を生むとして長期金利やドルが高騰、米国経済の混乱につながった経緯がある。

 実は、多くの米国企業は、巧妙なタックスプラニングを行っており、実際に負担している税率(実効税率)は、図表で見るように、わが国より低い水準にある(わが国は、安倍政権の下でこの時期から7%程度税率を引き下げているが、それを考慮に入れてもわが国の方が高い)。

 加えて、多くの製造業などが、様々な租税特別措置の恩恵を受けており、実効税率は十分低いので、税率のさらなる引き下げが、租税特別措置の廃止とセット(公約)で行われるのであれば、減収はそれほど生じないだろう。その分、産業界の評価も大きなものとはならないだろう。

 問題は、既得権益の塊である租税特別措置(loophole)をどこまで廃止できるかという点である。これまで、個々の産業から依頼を受けたロビイストたちが、毎年の税制改正で、政府・議会に働きかけて、様々な租税特別措置を実現してきた。

 このロビイスト政治が米国最大の特色で、一部の富裕層が自らの利益になるように法律や規制を自由に操ってきたと国民は感じており、ワシントン政治からの脱却を公約に掲げ支持を得たトランプの力量が試される。

 懸念されるのは、トランプの公約に、ラストベルト(錆びた地域)の復興が含まれているという点だ。ラストベルトは、重厚長大産業と置き換えてもよい。

 これを復活させる方法として、インフラ投資が考えられているようだが、加えてレーガン1期目の税制改革のように、設備投資減税、加速度償却など、重厚長大産業により恩恵の及ぶ税制改革を行うと、極めて効率の悪い税制となり、改革は失敗する可能性がある。レーガンは2期目の税制改革ですべて修正した。

IT多国籍企業の利益を
どう米国内に還流させるか

もう1つ米国にとって重要なことは、IT多国籍企業がタックスヘイブンにため込んでいる利益をどうやって米国に還流させるかということである。この点については、連載第124回にアップルの税金の話として問題意識を整理しているので、参照されたい。

 ブッシュ政権は、投資などに活用することを条件に、タックスヘイブンからの利益還流には税を軽減するという措置(タックスアムネスティー)を採った。しかしいまだ莫大な利益がタックスヘイブンに留保されている。

 これに対し共和党は、米国の全世界課税方式を改め、海外所得免除方式に変えるべく検討してきたが、民主党・オバマ政権に阻まれうまくいかなかった。トランプ案では、海外に留保している利益への追加課税などとなっているが、全世界課税方式を改めるチャンスが到来したと考えるべきだろう。