アップルがアイルランドで行う事業に対して同国の税制優遇措置を受けていることについて、欧州委員会は、EUの国家補助(state aid)法違反だとして、これまでの優遇税制の合計である130億ユーロ(約1兆5000億円)を、過去にさかのぼってアップルから追徴せよと命じた。
これを受けて、アイルランド政府は、「欧州委員会の決定は受け入れられない」として、欧州司法裁判所(ECJ)に提訴する手続きをとった。アップルも、「法に従って納税しており、違法はない」との立場を取り、今後の議論は司法の場に移っていく。
今回問題となったアップルのアイルランドでのスキームは、本欄(第65回「超巧妙なアップルの租税回避策」)でスキームの概要を紹介したダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドウィッチとは異なるものである。ダッチ(オランダ)は登場しない。
しかし、合法な私法取引をつなぎ合わせて、アップルが欧州で無形資産を活用して稼いだ利益の大部分を、アイルランドでは法人税負担を求めずに、税金のかからないところ(タックスヘイブンのペーパーカンパニー?)に移転させたという点においては、共通するものである。このスキームでアップルの実質的な税負担率は、2003年に1%だったのが、2014年には0.005%に低下しているという。
欧州委員会は、プレスリリースで、以下のような図を掲載している。
米国内でも
この問題への反応はさまざま
米国政府は、アップルへの追徴課税勧告に対して、「さかのぼって課税するというのは、EUへの投資を損なう決定だ」と欧州委員会に抗議したが、もう一つ力が入っていないようにも見える。以下、米国の本音を探ってみたい。