さらにこれらのストレスホルモンはATF3遺伝子のスイッチをONにする働きがあるという。この遺伝子がONになると免疫細胞がガンへの攻撃を行わなくなる。乳ガンの患者を調べた研究によると慢性的にストレスにさらされている患者の多くがATF3遺伝子がONの状態であり、1年後の生存率は45%だったという。ちなみに、ストレス要因が少なくATF3遺伝子がOFFの患者の生存率は85%である。

 その他にも突然の血管の破裂などにストレスホルモンが大きく関係している事が取材で明らかにされていく。また虐待などにより幼少期にストレスにさらされる事が、その後の人生にどれほど破壊的な状況を生み出すかも丹念に取材されている。

コーピング、マインドフルネス――
ストレス対処法に効果が!?

 最新の研究による身体への悪影響を読むと「ライフイベント・ストレスチェック」で700点という大台をたたき出した私にとって、それはまるで悪魔のシナリオだ。しかし、悪影響の最新研究だけで本書は終わらない。ストレスに対抗する最新研究もしっかりと紹介されている。

 それは運動、コーピング、マインドフルネスだ。コーピングとは認知行動療法のひとつで、肥大化した扁桃体を元に戻す作用があることが確認されている。また、マインドフルネスは思考の暴走であるマインド・ワンダリングを抑え、さらには萎縮した海馬を復元する力もある事が確認されているという。もしあなたが、上記のライフイベント・ストレスチェックを行い、私と同じように高得点をたたき出しているのなら、これらのストレス対処法はきっと役に立つはずだ。日々の忙しさと、そこから発生する人間関係の軋轢に悩む人たちにとって、これらの研究は救いになるに違いない。