海外や国内を忙しく飛び回り休みは家族で旅行と飛行機にお世話になる機会も多いはず。乾燥や気圧変化などをいかに克服して機内で快適に過ごすかビジネスパーソンや旅行好きのためのノウハウをお届けする。
機内を地上と同じく快適に
過ごしたいジェットセッター
ライト兄弟がライトフライヤー号で世界初の動力飛行に成功したのが1903年。そして旅客運用専用の旅客機が飛行したのが1919年。そして時は21世紀。2016年の今、旅の移動や出張の足に飛行機は欠かせない存在になった。最近では空を飛ぶ豪華ホテルと言われる機体も登場した。
我々が搭乗する機会の多い大型ジェット機は、高度約1万メートル、時速約900~1000キロで飛行している。飛行機は、気圧を調整する客室与圧装置とエアコンによって、地上に近い環境を人工的に作り出している乗り物なのである。
このような状況で地上と同じ環境を求めるのは酷ではあるが、少しでも機内環境を快適にするために、今回は、多くの旅客と空港で働く人々の健康をサポートする、羽田空港国際線クリニック所長、原規子先生にアドバイスをいただいた。
機内環境って、案外ストレス多いよね、と思っている出張族のあなた! そんなあなたに指南する、ジェットセッターのための機内環境快適術。
【気圧】
気圧の影響をよく知り対策して賢い乗客に
水平飛行中の機内の気圧は約0.8気圧。標高約2000~2500メートルの高地と同等の環境になっている。富士山でたとえると5合目ぐらい。またこの気圧環境の変化は、航空機の離着陸の15~30分間に集中して生じる。
その気圧変化が私たちの身体に及ぼす影響は、耳の痛み、鼻の痛み、歯痛、頭痛、腹痛および腹部膨満、呼吸が苦しいなど、様々。気圧が変化するとなぜ不調が出てしまうのだろうか?
「人間の顔には、実はたくさんの空洞があります。副鼻腔と総称されていますが、鼻の両脇にある上顎洞、おでこ周辺の前頭洞などがあります。個人差はありますが、気圧の変化により、空洞内の空気が膨張し神経などを圧迫します。それによって、歯痛、頭痛、耳の痛み、鼻の痛みなどが起こると考えられています。飛行機に乗るとそれらの不調が出るという認識のある方は、かかりつけの医師に予防薬を処方してもらうのが、おすすめです。歯痛、頭痛は市販の痛み止めでも十分だと思います。その際、薬の用法・用量を守って適切に使用してください。
一般的にクリニックで処方されるコールタイジン点鼻薬は、鼻の粘膜に作用して鼻閉(鼻づまり)を和らげる効果があります。
耳の痛みに関しては飴をなめる、あくびをするなど以外に、ダイビングで行われる耳抜きが効果的だと思います。ただ耳抜きは、多少のコツが必要なのであまり無理をしないようにしてください。
腹部の違和感ですが、気圧によって体内のガスが膨張し、腹部膨満の症状が出る方もいます。またガスの膨張で内臓が圧迫され、腹痛を起こすケースも。個人差はありますが便秘になってしまう方もいますよね。この場合は、腹部を締め付けない服装に気を配ってください。さらに炭酸飲料や冷たい飲み物を控えるのもおすすめします」(原規子先生)
気圧変化がもたらす
持病悪化は体調管理で
気圧変化により持病が悪化するケースや、もともとの体質的な不調、搭乗前の体調不良などが、機内環境に敏感に反応してしまうこともあるとか。気圧変化は人間の体のどのような部分に反応しやすいのだろうか?
「蓄膿症は、気圧変化で鼻の不具合が出やすく、痛みを伴うケースもあるので注意が必要です。また歯の治療中の方、普段から虫歯や痛みなどの不具合がある方も、痛みが激しくなる場合もあります。
気管支喘息は気圧と湿度の低下の影響を受けやすいと考えられます。気圧の影響を受けやすいのは、特に呼吸器、肺機能に持病のある方です。肺気腫のある方も同様です。
貧血も気圧に関連してきます。貧血に関して自覚症状のある場合は、急激なめまい、倦怠感が起こりやすいので、注意が必要です。そして心臓病をお持ちの方も、搭乗前に体調管理をきちんとしていただきたいと思います」(原先生)
自分の健康状態をきちんと把握し、予防薬、常備薬などを準備して、搭乗前に不安をなくすのも賢い旅客の条件かもしれない。